簿記1級の持分法は、連結の資本連結や未実現利益と論点が似ているのに、仕訳の相手勘定や消去する金額が少しずつ違います。そのため「連結の知識で解いたら1行ずれた」というミスが起きやすい分野です。
この記事では、上場企業で経理をしている私の目線で、連結と持分法の「同じ論点・違う処理」を1つの表で対照し、投資勘定の残高を2年分のタイムラインで追います。内容は2026年10月時点の会計基準と出題区分表にもとづいています。
持分法は「投資有価証券1本の残高がいくらになるか」を追う会計です。最後に残高を検算できれば、仕訳の抜けにすぐ気づけますよ。
- 持分法の考え方と、連結(全部連結)との違い
- 関連会社・非連結子会社の判定と、持分法を適用しないケース
- 連結と持分法の「同じ論点・違う処理」対照表
- 投資差額・利益取込・配当・未実現利益を2年分のタイムラインで追う数値例
- 関連会社から決算情報を集める実務の流れ
持分法とは?連結(全部連結)との違いを比較表で整理


持分法は「一行連結」
持分法は、投資会社が被投資会社の純資産と損益のうち自社の持分に見合う額だけ、投資の額を連結決算日ごとに修正する方法です。被投資会社の資産・負債を1行ずつ合算せず、投資有価証券という1つの勘定に集約して反映するため「一行連結」と呼ばれます。
親会社株主に帰属する当期純利益と純資産への影響は、一部の論点を除き全部連結と同じです。違うのは「どこに載せるか」で、持分法は投資勘定と持分法による投資損益の2つに集約します。
連結(全部連結)との比較表
| 項目 | 連結(全部連結) | 持分法 |
|---|---|---|
| 対象 | 子会社(支配) | 非連結子会社・関連会社(重要な影響) |
| 財務諸表の合算 | 資産・負債・収益・費用を全科目合算 | 合算しない(投資勘定1本) |
| 子会社・関連会社の利益 | 全額を合算し、非支配株主分を振り替え | 持分相当額を持分法による投資損益で取込 |
| 投資と資本の相殺 | 子会社株式と資本を相殺消去 | 相殺せず、差額をのれん相当額として投資に含める |
| 受取配当金 | 受取配当金と配当金を相殺 | 投資の額を減額 |
| 損益計算書の表示 | 売上高から当期純利益まで各科目に反映 | 持分法による投資損益を営業外収益・費用に一括表示 |
全部連結は「足して消す」、持分法は「1本の勘定を増減させる」と覚えると、仕訳の形がイメージしやすくなりますよ。
簿記1級での出題範囲
2026年度試験に適用される2022年度版の出題区分表では、連結会計の「6.持分法」は1級の範囲です。


持分法の適用対象:関連会社と非連結子会社


関連会社の判定(影響力基準)
関連会社は、出資・人事・資金・技術・取引などの関係を通じて、子会社以外の企業の財務や営業の方針に重要な影響を与えることができる場合の、その企業をいいます。持分法会計基準第5-2項では、次の3つのケースを挙げています。
| ケース | 議決権の所有割合 | 追加の要件 |
|---|---|---|
| (1) | 20%以上 | なし |
| (2) | 15%以上20%未満 | 役員の派遣、重要な融資、重要な技術提供、重要な取引などのいずれか |
| (3) | 緊密な者・同意している者と合わせて20%以上 | (2)と同じ要件のいずれか |
非連結子会社とは
非連結子会社は、子会社なのに連結の範囲に含めない会社で、支配が一時的な会社や、重要性が乏しく連結から除いた会社が該当します。その投資も、関連会社と同じく原則として持分法の対象です。
持分法を適用しないケース
- 持分法を適用しても連結財務諸表に重要な影響を与えない(重要性の乏しい)非連結子会社・関連会社
- 影響が一時的であると認められる関連会社(適用指針第22号第25項)
- 持分法を適用すると利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある会社(同第26項、限定的)
持分法を適用しない会社の株式は、連結財務諸表上も個別の帳簿価額(原価法)のままです。なお、重要な子会社を連結せずに持分法で済ませることは認められていません。
試験では「重要性が乏しいため持分法を適用しない」の一文で対象外になります。範囲の指示には線を引きましょう。
連結と持分法の「同じ論点・違う処理」対照表


6つの論点を1つの表で対照
| 論点 | 連結(子会社) | 持分法(関連会社) |
|---|---|---|
| 資産・負債の時価評価 | 全面時価評価法(非支配株主分も含め全額) | 部分時価評価法(投資会社の持分相当のみ) |
| 投資と資本の差額 | のれんとして計上し20年以内に償却 | のれん相当額を投資に含め、償却額は持分法による投資損益 |
| 子会社・関連会社の利益 | 全額合算し、非支配株主分を振替 | 持分相当額を投資有価証券に加算 |
| 配当金 | 受取配当金と配当金を相殺 | 受取配当金/投資有価証券で投資を減額 |
| ダウンストリームの未実現利益 | 全額消去(親会社が負担) | 関連会社は原則持分相当額、非連結子会社は全額 |
| アップストリームの未実現利益 | 全額消去し、非支配株主にも負担させる | 持分相当額を消去 |
差が出るのは時価評価と未実現利益です。持分法は「投資会社の持分の分だけ」が基本と押さえ、非連結子会社に持分法を適用するときだけは、時価評価(全面時価評価法)とダウンストリーム(全額消去)が連結と同じになる点に注意しましょう。
未実現利益の消去仕訳(簿記1級の頻出パターン)
持分法会計に関する実務指針が定める原則の仕訳は次のとおりです。
| 取引の方向 | 原則の仕訳 | 消去額 |
|---|---|---|
| ダウンストリーム(投資会社→関連会社) | 売上高/投資有価証券 | 未実現利益×持分割合 |
| アップストリーム(関連会社→投資会社) | 持分法による投資損益/商品 | 未実現利益×持分割合 |
相手勘定の取り違えに注意
ダウンストリームは商品が関連会社の手元にあり、連結貸借対照表に減らす商品がないため投資有価証券を減らします。アップストリームは投資会社の手元の商品を減らします。容認規定もあるので、問題文の指示を確認しましょう。
段階取得と連結への移行
持分法の範囲内で買い増したときは、取得日ごとにのれん相当額を計算して積み上げます。持分法から連結に移行するとき(支配獲得時)は、それまでの持分を支配獲得日の時価で評価し直し、持分法評価額との差額を段階取得に係る損益として処理します。
連結の「段階取得に係る差益」と持分法の「取得日ごとののれん」は混同しやすいので、どちらの場面かを先に確認しましょう。


投資勘定の残高を2年分のタイムラインで追う


数値例の前提
P社はX1年3月31日にA社の発行済株式の30%を330,000円で取得し、A社を関連会社としました。取得時のA社の純資産は資本金600,000円、利益剰余金200,000円です。A社の土地(簿価200,000円)の時価は300,000円で、他の資産・負債は簿価=時価です。のれん相当額は10年で定額償却し、税効果は考慮しません。
| 項目 | X1年度 | X2年度 |
|---|---|---|
| A社の当期純利益 | 150,000 | 200,000 |
| A社の配当金(P社受取額) | 50,000(15,000) | 80,000(24,000) |
| 未実現利益 | P社→A社の商品にP社の利益20,000 | A社→P社の商品にA社の利益30,000 |
取得時:のれん相当額の計算
取得時は仕訳なしで、計算だけ行います。評価差額は土地の含み益100,000円の30%で30,000円です(部分時価評価法)。A社の資本のうちP社の持分は800,000円×30%+30,000円=270,000円なので、のれん相当額は330,000円-270,000円=60,000円、毎期の償却額は6,000円です。
X1年度の連結修正仕訳
| 内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| のれん相当額の償却 | 持分法による投資損益 6,000 | 投資有価証券 6,000 |
| 当期純利益の取込 | 投資有価証券 45,000 | 持分法による投資損益 45,000 |
| 受取配当金の修正 | 受取配当金 15,000 | 投資有価証券 15,000 |
| ダウンストリームの未実現利益 | 売上高 6,000 | 投資有価証券 6,000 |
X1年度の持分法による投資損益は45,000円-6,000円=39,000円(貸方)です。未実現利益6,000円は売上高で調整するため含みません。
X2年度の連結修正仕訳
| 内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 開始仕訳 | 投資有価証券 18,000 | 利益剰余金(期首)18,000 |
| のれん相当額の償却 | 持分法による投資損益 6,000 | 投資有価証券 6,000 |
| 当期純利益の取込 | 投資有価証券 60,000 | 持分法による投資損益 60,000 |
| 受取配当金の修正 | 受取配当金 24,000 | 投資有価証券 24,000 |
| 前期ダウンストリームの実現 | 投資有価証券 6,000 | 売上高 6,000 |
| アップストリームの未実現利益 | 持分法による投資損益 9,000 | 商品 9,000 |
開始仕訳の18,000円は、X1年度の仕訳の投資有価証券の純増額(45,000-6,000-15,000-6,000)です。X2年度の持分法による投資損益は60,000円-6,000円-9,000円=45,000円になります。
投資有価証券のタイムラインと検算
| 時点 | 増減の内訳 | 投資有価証券残高 |
|---|---|---|
| X1年3月31日(取得) | - | 330,000 |
| X1年度 | +45,000 -6,000 -15,000 -6,000 | 348,000 |
| X2年度 | +60,000 -6,000 -24,000 +6,000 | 384,000 |
検算は「A社の期末純資産×30%+評価差額+未償却ののれん相当額-投資に残る未実現利益」です。X1年度末は900,000円×30%+30,000円+54,000円-6,000円=348,000円、X2年度末は1,020,000円×30%+30,000円+48,000円=384,000円で、どちらもタイムラインの残高と一致します。アップストリームの9,000円は商品で調整するため残高に影響しません。
タイムラインのコツ
投資有価証券の残高を横1本の線にして、取得原価から「+利益取込」「-償却」「-配当」「-ダウン消去」を書き込みます。純資産からの検算と一致すれば完成です。
検算は30秒で終わります。合わないときは、配当の修正かダウンストリームの戻し忘れがほとんどです。
持分法の解き方の手順とよくあるミス


試験で解く5つの手順
関連会社か非連結子会社か、持分法を適用しない会社はないかを問題文で確認します。
関連会社は持分相当の評価差額だけを加え、投資額との差をのれん相当額にします。
前期末までの投資の増減を、投資有価証券と利益剰余金期首でまとめて1本にします。
償却、利益取込、配当修正、未実現利益の消去(前期分の実現も含む)を順に書きます。
期末純資産×持分割合+評価差額+未償却ののれん相当額と比べます。
手順3の開始仕訳は、前期の仕訳の投資有価証券をすべて足すだけです。損益項目は利益剰余金期首に置き換えましょう。
よくあるミス
よくあるミス
- 関連会社なのに評価差額を全額(全面時価評価)で計算してしまう
- 受取配当金の修正を忘れ、投資有価証券が過大になる
- ダウンストリームの未実現利益を全額消去する(関連会社は原則持分相当額)
- アップストリームの消去で投資有価証券を減らし、商品を残してしまう
- 前期の未実現利益の実現(戻し)を当期に書き忘れる
- のれん相当額の償却を販売費及び一般管理費に表示する(持分法による投資損益に含める)
連結の直後は全額消去の癖が残りがちです。「関連会社は持分だけ」と余白にメモしておくと安心です。
実務の視点:関連会社から何をいつ集めるか


決算情報の収集スケジュール
実務で大変なのは、計算より関連会社から数字を期限までに集めることです。私の会社では連結パッケージ(決まった様式の報告シート)を配り、次の項目を回収しています。
| 時期 | 集める情報 | 使い道 |
|---|---|---|
| 決算前 | 決算日、会計方針、重要な取引の予定 | 決算日の差異と会計方針の統一の確認 |
| 決算後すぐ | 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書 | 利益取込、配当修正、その他の包括利益の持分 |
| 決算後すぐ | 当社グループとの取引高・期末在庫に含まれる利益 | 未実現利益の消去 |
| 開示前 | 後発事象、偶発債務、注記用の情報 | 決算日差異期間の修正・注記 |
決算日の差異と会計方針の統一
持分法では、被投資会社の直近の財務諸表を使います。決算日に差異があり、その期間に重要な取引があれば、修正または注記が必要です。連結子会社は差異3か月以内なら正規の決算を使えるため、実務では12月決算の関連会社を3月決算に取り込む運用もよく見られます。
同じ環境で行われた同じ性質の取引は、投資会社と持分法適用会社の会計方針を原則として統一します。関連会社は支配していないため情報が限られることもあり、早めに違いを洗い出すことが大切です。
重要性の判断・開示・税効果
実務で押さえる3つのポイント
- 重要性:持分法を適用しない会社は、利益と利益剰余金への影響(量的)と会社の特性(質的)で判断し、毎期見直す
- 開示:持分法による投資損益は営業外収益・費用に一括表示し、持分法を適用した会社の範囲を注記する。個別では関連会社株式として原価法
- 税効果:評価差額は税効果控除後の金額で計上し、未実現損益の消去にも税効果を適用する
税効果の仕訳の基本は、同じ簿記1級シリーズの記事で解説しています。


関連会社には数字をお願いする立場です。相手の決算日程に合わせて、スケジュールを早めに共有するのがコツですよ。
まとめ
- 持分法は、非連結子会社・関連会社の純資産と損益の持分を投資有価証券1本に反映する「一行連結」
- 関連会社は議決権20%以上、または15%以上20%未満で役員派遣などの要件を満たす会社
- 関連会社は部分時価評価法、ダウンストリームは原則持分相当額を消去する
- 仕訳は、のれん相当額の償却・利益取込・配当修正・未実現利益の消去の4つ
- 最後に、期末純資産×持分割合+評価差額+未償却ののれん相当額で投資残高を検算する
持分法は、投資有価証券の残高を1本のタイムラインで追えば、どの論点も同じ流れで解けます。今回の数値例を白紙に書き写して、残高が348,000円と384,000円になるか試してみてください。







