月次決算で製品の単価を見たとき、「先月より急に上がっている」「月末製品の金額が説明できない」と手が止まったことはありませんか。製品の払出単価は材料・仕掛品の数字がそろってはじめて決まるため、1か所ずれると売上原価まで影響します。
この記事では、上場企業の経理として原価計算やERPの導入にも関わってきた私の目線で、総平均法による製品原価・売上原価・月末製品の計算を実務の手順に落として整理します。材料から製品までを1つの数値例でつなぎ、仕訳・端数処理・月次締めの順番・単価の異常チェックまで具体的に紹介します。
総平均法は「月末にまとめて単価を出す」方法です。計算はシンプルな分、受払データの正しさがそのまま単価の正しさになりますよ。
- 総平均法の計算式と、移動平均法・先入先出法との違い
- 材料から製品・売上原価までの総平均法の流れと仕訳
- 単価の端数処理と、差額を売上原価に寄せる考え方
- 月次総平均法・期間総平均法と税務・会計上のルール
- ERPの設定、単価の異常の見つけ方、月次チェックリスト
総平均法とは?計算式と移動平均法・先入先出法との違い


総平均法の計算式
総平均法は、一定期間の「期首(月初)在庫+期間中の受入」の合計金額を合計数量で割って平均単価を出し、その単価で払出と期末在庫を評価する方法です。
計算式は総平均単価=(月初在庫の金額+当月受入の金額)÷(月初在庫の数量+当月受入の数量)です。製品なら「受入」は工場からの完成品、「払出」は出荷(売上原価)になります。
移動平均法・先入先出法との比較
| 項目 | 総平均法 | 移動平均法 | 先入先出法 |
|---|---|---|---|
| 単価の計算 | 期間の合計÷合計数量 | 受入のたびに平均を更新 | 古いものから払い出す |
| 単価が決まる時期 | 期間の終わり | 受入の都度 | 受入の都度 |
| 計算の手間 | 少ない | 多い | 中くらい |
| 期中の売上原価 | 仮単価で計上し後で修正 | その都度確定 | その都度確定 |
| 単価の動き | なだらか | 受入ごとに動く | 受入ロットの単価で動く |
メリットとデメリット
メリットは、計算が簡単で、単価が月の中でぶれないことです。同じ月の出荷は同じ単価なので、粗利も比べやすくなります。
デメリットは、期間が終わるまで単価が確定しないことです。日々の出荷は前月単価などの仮単価で計上し、締めで差額を修正する運用が一般的です。
総平均法は総合原価計算と相性がよい方法です。受注生産の個別原価計算では、平均単価の出番は少なくなります。


製品勘定での総平均法|材料から売上原価までの流れ


材料→仕掛品→製品→売上原価の流れ
製造業では、総平均法は材料の払出と製品の払出の2か所で使われることが多いです。
| 段階 | 受入(借方) | 払出(貸方) | 総平均法を使う場面 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 月初材料+当月購入 | 当月消費額→仕掛品 | 材料の消費単価 |
| 仕掛品 | 月初仕掛品+当月製造費用 | 完成品原価→製品 | 平均法による月末仕掛品の評価 |
| 製品 | 月初製品+完成品原価 | 売上原価・月末製品 | 製品の払出単価 |
製品の単価は「上流の確定」を待つ
製品の単価は、材料単価・加工費の配賦・仕掛品の評価が終わってはじめて計算できます。上流の数字が1つでも遅れると、製品の単価と売上原価が出せないので、締めのスケジュールはこの順番を前提に組みます。
材料の総平均法は「消費額」、製品は「売上原価」に効く
材料の単価のずれは、仕掛品を通じて製品の単価に波及します。製品の単価がおかしいときは、材料や仕掛品までさかのぼって確認しましょう。
材料の消費額の計算は別記事でくわしく扱っています。ここでは製品側の単価と売上原価に絞って進めますね。


数値例と仕訳|総平均法で製品原価と売上原価を計算する


材料の総平均単価と消費額
製品Aを作る工場の10月を例にします。月次総平均法で、金額はすべて説明用の仮の数値です。材料Xは月初1,000kg(@500円)、10月5日に3,000kg(@520円)、10月20日に2,000kg(@545円)を受け入れ、当月に4,800kgを消費しました。
総平均単価は3,150,000円÷6,000kg=525円です。当月消費額は4,800kg×525円=2,520,000円、月末材料は1,200kg×525円=630,000円になります。
同じ受払を先入先出法で計算すると消費額は2,496,000円で、仕入単価が上がる局面では総平均法のほうが原価がやや大きくなります。
完成品原価と製品の総平均単価
当月製造費用は、材料費2,520,000円に労務費1,200,000円と製造間接費(予定配賦)780,000円を加えた4,500,000円です。月初仕掛品300,000円、月末仕掛品420,000円とすると、完成品原価は4,380,000円(2,000個)になります。
| 製品A | 数量 | 金額 |
|---|---|---|
| 月初製品 | 500個 | 1,052,000 |
| 当月完成 | 2,000個 | 4,380,000 |
| 合計(総平均単価@2,172.8円) | 2,500個 | 5,432,000 |
| 売上原価(出荷) | 2,100個 | 4,562,800 |
| 月末製品 | 400個 | 869,200 |
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 2,520,000 | 材料 | 2,520,000 |
| 仕掛品 | 1,980,000 | 労務費 | 1,200,000 |
| 製造間接費 | 780,000 | ||
| 製品 | 4,380,000 | 仕掛品 | 4,380,000 |
| 売上原価 | 4,562,800 | 製品 | 4,562,800 |
端数処理は「月末製品を単価×数量、残りを売上原価」
総平均単価2,172.8円のように割り切れないときは、ルールを決めておきます。この例では単価は円未満を四捨五入して2,173円とし、月末製品を400個×2,173円=869,200円、売上原価を合計5,432,000円から月末製品を引いた4,562,800円にしています。
| 計算方法 | 売上原価 | 月末製品 | 合計との差 |
|---|---|---|---|
| 月末製品を単価×数量、残りを売上原価 | 4,562,800 | 869,200 | 0 |
| 両方を単価×数量で計算 | 4,563,300 | 869,200 | 500 |
両方を単価×数量で出すと、合計が500円ずれます。差額は売上原価に寄せるルールにしておけば、在庫の金額は「単価×数量」で説明でき、勘定残高も必ず一致します。端数処理の方法は継続して同じものを使いましょう。
総平均法で製品原価を計算する手順
月初材料と当月受入から総平均単価を出し、当月消費額と月末材料を計算します。
材料費に労務費と製造間接費の配賦額を加えます。
月初仕掛品+当月製造費用−月末仕掛品で完成品原価を確定します。
月初製品と完成品を合計し、端数処理ルールに沿って単価を計算します。
月末製品を単価×数量で評価し、残りを売上原価とします。出荷時に仮単価で計上していれば差額を修正します。
仕掛品の評価(完成品換算量や平均法)は別記事でくわしく解説しています。


月次総平均法と期間総平均法|税務・会計上の評価方法


月次総平均法と期間(年次)総平均法
総平均法には、1か月ごとに単価を出して翌月に繰り越す月次総平均法と、事業年度全体で1つの単価を出す期間総平均法があります。法人税の通達でも、1か月ごとや6か月ごとに計算する方法は総平均法に当たるとされています(法人税基本通達5-2-3、5-2-3の2)。
| 項目 | 月次総平均法 | 期間(年次)総平均法 |
|---|---|---|
| 単価の計算 | 毎月 | 事業年度末に1回 |
| 月次の売上原価 | 月ごとに確定 | 期中は仮単価、期末に修正 |
| 単価の動き | 月ごとの原価を反映 | 年間で平準化 |
| 向いている会社 | 月次の粗利管理を重視 | 月次の精度より手間を減らしたい |
期間総平均法は期末の修正額が大きくなりやすいので、月次の利益を経営判断に使う会社は月次総平均法のほうが扱いやすいです。
税務上の評価方法と届出
法人税では、棚卸資産の評価方法として原価法(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)と低価法が定められています(法人税法施行令28条)。評価方法は事業の種類ごと、かつ製品・半製品・仕掛品・原材料などの区分ごとに選び、設立した事業年度の確定申告期限までに税務署へ届け出ます(同29条)。
| 場面 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出をしなかった場合 | 最終仕入原価法による原価法 | 法人税法施行令31条 |
| 評価方法を変える場合 | 新しい方法を使う事業年度開始の日の前日までに承認申請 | 法人税法施行令30条 |
| 今の方法を採用して3年未満 | 特別な理由がなければ却下されることがある | 法人税基本通達5-2-13 |
会計上の評価方法と収益性の低下
会計では、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」で、平均原価法の平均原価は総平均法または移動平均法で算出すると定められています。
また、期末の正味売却価額が取得原価より下がっていれば、正味売却価額まで簿価を切り下げます(収益性の低下による簿価切下げ)。切下額は原則として売上原価ですが、製造に関連して不可避的に発生するものは製造原価として処理します。
税務と会計の評価方法はそろっているか確認
会計で月次総平均法を使っていても、税務署への届出が別の方法のままになっているケースがあります。届出書の控えとシステムの設定を一度並べて確認しておきましょう。
評価方法の届出は会社設立時に出したきりのことが多いです。一度、控えを探して中身を確かめてみてください。
ERP・原価計算システムでの設定と月次締めの順番


システムで決めておく設定
ERPや原価計算システムで総平均法を使うときは、品目ごとの評価方法と単価の確定タイミングを最初に決めます。
| 設定項目 | 決める内容 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 評価方法 | 品目区分ごとに総平均法を指定 | 一部の品目だけ移動平均のまま |
| 評価単位 | 品目・工場・倉庫のどの単位で平均するか | 倉庫ごとに単価が分かれて説明できない |
| 仮単価 | 出荷時に使う単価(前月単価・標準原価など) | 新製品の仮単価がゼロ |
| 端数処理 | 単価の桁数と差額の寄せ先 | 月末在庫に差額が残り続ける |
| 締め処理 | 単価計算の実行順と再計算の可否 | 締め後の入力で単価が変わる |
月次締めの順番
締めは材料→仕掛品→製品→売上原価の順に進めます。材料の受払を締めて材料単価を確定し、加工費の配賦、仕掛品の評価、製品単価の計算、売上原価の差額修正と進めます。
締めた後の入力は単価計算をやり直す
製品単価を出した後に材料の仕入や出庫の訂正が入ると、上流から再計算が必要です。「在庫締め」の日を決め、遅れた入力は翌月処理にするなどルール化しておきましょう。
原価差額の処理
予定配賦や標準原価を使うと原価差異が出ます。例で製造間接費の実際発生額が800,000円なら、予定配賦780,000円との差20,000円が不利な配賦差異です。原価計算基準では、原価差異は原則として当年度の売上原価に賦課するとされているので、「売上原価 20,000/製造間接費配賦差異 20,000」と振り替えます。
税務では、原価差額のうち期末在庫に対応する部分は在庫に加算するのが原則ですが、総製造費用のおおむね1%以内なら明細書の添付を条件に調整しないことができます(法人税基本通達5-3-1、5-3-3)。判定は事業年度単位で行います。
差異の振替はERPで自動化できることが多いです。毎回手で振り替えているなら設定を見直しましょう。
単価が異常に動く原因と棚卸差異・監査対応


単価が異常に動く原因
総平均単価は、数量が少ないところに金額だけが乗ると大きく跳ねます。たとえば月初在庫ゼロで5個だけ完成した製品に、原価差額30,000円を追加で配賦すると、単価は2,190円から8,190円になります。
| 原因 | 起きること | 確認方法 |
|---|---|---|
| 少量の受入 | わずかな数量に費用が集中する | 完成数量と金額を前月と比べる |
| 返品 | 戻った製品の金額が実際と違う | 返品の受入単価の設定を見る |
| ゼロ在庫 | 差額だけが残り単価が出ない | 数量ゼロ・金額ありの品目を抽出 |
| マイナス在庫 | 平均の分母が小さく・マイナスになる | 出荷と完成の入力順を確認 |
| 期ズレ | 完成と出荷の月がずれる | 月末前後の伝票日付を確認 |
チェックは、前月単価との変動率で行うのが手軽です。例の製品Aは前月2,104円から2,173円で、上昇は約3.3%です。変動率の大きい品目や、数量ゼロで金額が残る品目を毎月一覧で出し、理由をメモしておきましょう。
棚卸差異の処理
実地棚卸で製品Aが398個しかなく、帳簿の400個と2個ずれていたら、総平均単価2,173円で評価して4,346円を棚卸減耗損として処理します。
仕訳は「棚卸減耗損 4,346/製品 4,346」です。差異が続くなら出荷や完成報告の入力漏れを疑いましょう。
監査で見られる点と月次チェックリスト
監査では、評価方法が継続して適用されているか、単価の計算過程を再現できるかがよく見られます。品目別の受払表を出せるようにし、滞留在庫や収益性の低下の判断根拠も説明できるようにしておきましょう。
監査に備えて残しておく資料
- 品目別の受払表と総平均単価の計算結果
- 端数処理と仮単価のルールを書いた手順書
- 棚卸差異と原価差異の処理の明細
総平均法の月次チェックリスト
- 材料・仕掛品・製品の順に単価を確定している
- 製品の勘定残高と受払表の月末金額が一致している
- 前月単価から大きく動いた品目に理由がある
- 数量ゼロ・マイナスの在庫に金額が残っていない
- 仮単価で計上した売上原価の差額を修正している
単価の異常は、ほとんどが入力のタイミングか数量のずれです。金額より先に数量を疑いましょう。
まとめ
- 総平均法は(月初在庫+当月受入)÷合計数量で単価を出す方法で
- 製品の単価は(月初製品+完成品原価)÷合計数量で求め
- 端数は月末製品を単価×数量で評価し、差額を売上原価に寄せると残高が必ず合う
- 税務は法人税法施行令28条〜31条、会計は企業会計基準第9号に沿って評価方法を選び
- 月次締めは材料→仕掛品→製品→売上原価の順に進め、単価の変動を毎月チェックする
まずは主要な製品について、月初・完成・出荷・月末の受払表を作り、総平均単価を自分で再計算してみてください。ずれればどこを直すべきかがはっきりします。
製品の単価を説明できると、売上原価や粗利の数字に自信が持てます。







