決算が終わると、法人税と並んで消費税の申告書を作る時期がやってきます。「付表の数字はどこから取るのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、上場企業の経理として会計システムにも関わってきた私の目線で、法人の消費税確定申告書の作り方を整理します。特に、計算の流れ、第一表・第二表の主な欄、会計システムの数字との突合が中心です。
消費税の申告書は、付表で計算して第二表、第一表の順に転記する流れさえつかめば怖くありません。
- 消費税申告書の種類と付表、申告期限・中間申告
- 課税標準額から納付税額までの計算の流れ
- 第一表・第二表の主な欄と転記元
- 数値例で見る納付税額の計算と決算仕訳
- 税区分のチェック、よくあるミス、e-Taxでの提出
消費税申告書とは?一般用・簡易課税用と付表の全体像


申告書は第一表・第二表と付表のセット
法人の消費税の確定申告書は、第一表(税額の計算)と第二表(課税標準額等の内訳書)に、計算過程を示す付表を添付して提出します。国税と地方消費税は同じ申告書で申告します。
| 計算方法 | 使う申告書 | 主な付表(標準税率・軽減税率のみの場合) |
|---|---|---|
| 一般課税(原則課税) | 一般用の第一表・第二表 | 付表1-3(税率別消費税額計算表)、付表2-3(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表) |
| 簡易課税 | 簡易課税用の第一表・第二表 | 付表4-3(税率別消費税額計算表)、付表5-3(控除対象仕入税額等の計算表) |
| 2割特例 | 一般用または簡易課税用 | 付表6(税率別消費税額計算表) |
旧税率(3%・4%・6.3%)の取引がある場合は付表1-1・1-2などを使います。上場企業の多くは一般課税で、付表1-3と2-3を作ります。
申告期限は2か月、延長特例で1か月延長
確定申告書の提出と納付の期限は、課税期間(事業年度)の終了の日の翌日から2か月以内です。法人税の申告期限の延長の特例を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を提出すると、消費税の確定申告の期限も1か月延長されます。ただし、延長した期間は利子税がかかります。
中間申告は、直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を含まない年税額)で回数が決まります。
| 直前の確定消費税額 | 中間申告の回数 | 1回あたりの中間納付税額 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則不要(任意の中間申告あり) | − |
| 48万円超400万円以下 | 年1回 | 確定消費税額の6/12 |
| 400万円超4,800万円以下 | 年3回 | 確定消費税額の3/12 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 確定消費税額の1/12 |
中間納付税額とあわせて、その22/78の地方消費税も納付します。仮決算で計算した税額で中間申告することもできます。
確定申告書には「申告した中間納付税額」を書く
第一表の中間納付税額欄には、納付した額ではなく、中間申告で納付すべき税額の合計を書きます。年3回なら3回分の合計です。
延長特例を使うと、3月決算法人の期限は6月末になります。法人税と同じ日に提出できて便利ですよ。
消費税の計算の流れ|課税標準額から納付税額まで


課税標準額と消費税額は税率ごとに計算する
一般課税の納付税額は売上げの消費税額−控除対象仕入税額です。売上げは税率ごとの税込金額に100/110(軽減は100/108)を掛けて課税標準額を出し、千円未満を切り捨てます。
申告書で使う税率は国税分の標準税率7.8%、軽減税率6.24%で、地方消費税は差引税額の22/78で計算します。
割戻し計算と積上げ計算
| 区分 | 割戻し計算(原則) | 積上げ計算(特例) |
|---|---|---|
| 売上税額 | 課税標準額×7.8%(6.24%) | 交付したインボイスの写しの消費税額等の合計×78/100 |
| 仕入税額 | 税率ごとの税込合計×7.8/110(6.24/108) | 受け取ったインボイスの消費税額等の合計×78/100(帳簿積上げも可) |
| 組み合わせの制限 | 仕入税額の割戻し計算は、売上税額も割戻し計算の場合のみ | 売上税額が積上げなら、仕入税額も積上げ |
売上税額は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を併用することもできます。会計システムの設定と申告の計算方法がずれていないかを確認しておきましょう。
仕入税額控除の方式と簡易課税・2割特例
仕入税額の控除方法は、課税売上高5億円以下、かつ、課税売上割合95%以上なら全額控除です。どちらかを満たさない場合は、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。
| 方式 | 計算のしかた | ポイント |
|---|---|---|
| 全額控除 | 課税仕入れ等の税額をすべて控除 | 課税売上高5億円以下、かつ、課税売上割合95%以上 |
| 個別対応方式 | 課税売上げ用+共通用×課税売上割合 | 仕入れを課税用・非課税用・共通用に区分することが条件 |
| 一括比例配分方式 | 課税仕入れ等の税額×課税売上割合 | 選択すると2年間以上継続して適用 |
簡易課税は、基準期間の課税売上高5,000万円以下の場合に選べ、売上税額にみなし仕入率(90%〜40%)を掛けて仕入税額とします。2割特例は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者向けで、令和8年9月30日の属する課税期間まで(3月決算法人は令和9年3月期まで)です。
端数処理の順番を間違えない
- 課税標準額は税率ごとに千円未満を切り捨てる
- 消費税額・控除対象仕入税額は1円未満を切り捨てる
- 差引税額(納付税額)は百円未満を切り捨てる
- 地方消費税は差引税額×22/78の百円未満を切り捨てる
課税売上割合が95%ぎりぎりの会社は要注意です。土地の売却などがあると、一気に95%を下回ることがあります。
第一表・第二表の書き方|主な欄と転記元


作成の順番は付表→第二表→第一表
国税庁の「申告書(一般用)の書き方(法人用)」では、付表2-3と付表1-3で計算し、第二表、第一表の順に転記する流れです。主な欄は次のとおりです。
| 第二表の欄 | 何を書くか | 転記元 |
|---|---|---|
| ①課税標準額 | 税率ごとの課税標準額の合計 | 付表1-3の①C欄 |
| ⑤⑥⑦課税資産の譲渡等の対価の額 | 6.24%・7.8%適用分と合計 | 付表1-3の①-1欄 |
| ⑪消費税額 | 税率ごとの消費税額の合計 | 付表1-3の②C欄 |
| ⑳㉓地方消費税の課税標準となる消費税額 | 地方消費税の計算のもとになる税額 | 付表1-3の⑪C欄(還付の場合は⑩C欄) |
欄番号は現行様式(令和5年10月1日以後終了課税期間分)のものです。様式は改正で変わるため、作成時は最新の様式で確かめてください。
| 第一表の欄 | 何を書くか | 転記元・計算 |
|---|---|---|
| ②消費税額 | 課税標準額に対する消費税額 | 第二表の⑪欄 |
| ④控除対象仕入税額 | 控除できる仕入税額 | 付表1-3の④C欄 |
| ⑨差引税額 | ②+③−⑦(百円未満切捨て) | 付表1-3の⑨C欄 |
| ⑩中間納付税額 | 中間申告で納付すべき税額の合計 | 中間申告書の控え |
| ⑮⑯課税売上割合の欄 | 課税資産の譲渡等の対価の額、資産の譲渡等の対価の額 | 付表2-3の④欄・⑦欄 |
| ⑳納税額・㉒納付譲渡割額 | 地方消費税額と、中間納付譲渡割額を引いた額 | 付表1-3の⑬欄、計算 |
| ㉖合計税額 | 国税と地方消費税の合計(納付または還付) | (⑪+㉒)−(⑧+⑫+⑲+㉓) |
第一表右側の付記事項・参考事項では、売上税額の積上げ計算の適用の有無と、控除税額の計算方法を選び、基準期間の課税売上高も記載します。控除不足還付税額がある場合は、還付申告に関する明細書の添付が必要です。
欄と転記元の対応表を作っておくと、担当者が替わっても同じ品質で作れます。
数値例で確認|納付税額の計算と決算仕訳


前提条件(仮の数値)
3月決算法人、税抜経理、売上げ・仕入れとも割戻し計算、仕入れはすべてインボイスありとします。課税売上(税込)は標準税率331,234,500円・軽減税率108,765,400円、課税仕入(税込)は標準税率220,345,600円・軽減税率75,432,100円です。非課税売上(受取利息)は500,000円、前期の確定消費税額は8,400,000円とします。
| 計算項目 | 計算式 | 金額(円) |
|---|---|---|
| 課税標準額(標準) | 331,234,500×100/110→千円未満切捨て | 301,122,000 |
| 課税標準額(軽減) | 108,765,400×100/108→千円未満切捨て | 100,708,000 |
| 消費税額 | 301,122,000×7.8%+100,708,000×6.24% | 29,771,695 |
| 控除対象仕入税額 | 220,345,600×7.8/110+75,432,100×6.24/108 | 19,982,805 |
| 差引税額 | 29,771,695−19,982,805→百円未満切捨て | 9,788,800 |
| 中間納付税額 | 8,400,000×3/12×3回 | 6,300,000 |
| 納付税額(国税) | 9,788,800−6,300,000 | 3,488,800 |
| 譲渡割額(地方消費税) | 9,788,800×22/78→百円未満切捨て | 2,760,900 |
| 納付譲渡割額 | 2,760,900−中間納付譲渡割額1,776,900 | 984,000 |
| 合計納付税額 | 3,488,800+984,000 | 4,472,800 |
課税売上高は税抜で約4.02億円、課税売上割合は約99.9%なので全額控除です。中間申告は年3回で、1回あたり国税2,100,000円、地方消費税592,300円を納付済みとしています。
決算仕訳と差額の処理
税抜経理では、仮受消費税等と仮払消費税等を相殺し、納付額を未払消費税等に計上します。中間納付額は仮払金で処理していたとします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮受消費税等 | 38,168,923 | 仮払消費税等 | 25,618,981 |
| 仮払金(中間納付分) | 8,076,900 | ||
| 未払消費税等 | 4,472,800 | ||
| 雑収入 | 242 |
帳簿の仮受・仮払は取引ごとの端数処理で積み上がるため、申告書の税額とは一致しません。差額が貸方なら雑収入、借方なら雑損失です。差額が大きいときは税区分の誤りを疑いましょう。
差額の目安を持っておく
割戻し計算なら、差額は端数処理で生じる程度に収まるのが普通です。毎期の差額を記録しておくと、異常値にすぐ気づけます。
未払消費税等は、仮受と仮払の差し引きではなく、必ず申告書の納付税額で計上しましょう。


会計システムの税区分チェックとよくあるミス


税区分の集計表と総勘定元帳を突合する
申告書の数字は、会計システムの消費税集計表(税区分別の集計)から作るのが一般的です。税区分一覧表で勘定科目ごとの初期設定を確認し、集計表の金額が総勘定元帳や試算表と合っているかを突合します。
よくあるミスと対策
| よくあるミス | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 税区分の誤り(標準と軽減の混同など) | 税率ごとの税額がずれる | 税区分一覧を毎月確認 |
| 非課税と不課税の混同 | 非課税は課税売上割合の分母に入り、不課税は入らない | 受取利息などの区分を確認 |
| 輸入消費税の処理 | 税関に納めた消費税額を税込金額として再計算してしまう | 輸入消費税専用の税区分を使い、国税分を集計 |
| インボイスのない仕入れ | 経過措置の控除割合や対象外の仕入れを誤る | 登録番号を管理し、経過措置用の税区分を分ける |
| 中間納付額の入力漏れ | 納付税額が過大になる | 中間申告書の控えと照合 |
インボイス発行事業者以外からの仕入れの経過措置は、令和8年9月30日までの仕入れは80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%控除できます。その後50%、30%と縮小し、令和13年10月以降は控除できません。
控除割合は仕入れを行った日で決まるため、3月決算法人の令和9年3月期は80%と70%の仕入れが同じ期に混在します。税区分を分けておきましょう。また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の免税事業者等からの対象仕入れが年1億円(税込)を超える部分に経過措置を使えません。


申告前のチェックリスト
- 消費税集計表の金額が総勘定元帳・試算表と一致しているか
- 非課税・不課税・免税の区分に誤りがないか
- 輸入消費税を専用の税区分で集計したか
- 経過措置(80%・70%)の仕入れを区分しているか
- 割戻し・積上げの選択と付記事項のチェックが一致しているか
- 中間納付税額・中間納付譲渡割額を入力したか
税区分のミスは、決算でまとめて直すより月次で潰すほうがずっと楽です。
消費税申告書作成の流れ5ステップとe-Taxでの提出


決算から提出までの5ステップ
決算整理後の消費税集計表を総勘定元帳と突合し、税区分の誤りを直します。
課税売上高5億円以下・課税売上割合95%以上かを確認し、控除方式を決めます。
付表2-3で控除対象仕入税額を、付表1-3で税率ごとの税額と地方消費税を計算します。
第二表、第一表へ転記して中間納付税額を入れ、未払消費税等の仕訳を計上します。
レビュー後にe-Taxで申告書と付表を送信し、期限までに納付します。
資本金1億円超の法人はe-Taxが義務
事業年度開始の時の資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人などは、消費税等の確定申告書を付表も含めてe-Taxで提出する義務があります。
法人税の申告書と並行して進め、期限の1〜2週間前にレビューを終えるのが理想です。
前期比較で異常値を見つける
課税標準額、控除対象仕入税額、納付税額を前期と並べ、売上高や仕入高の増減と整合しているかを確認します。説明できない増減は、税区分の誤りのサインです。
e-Taxなら電子納付まで完結します。


まとめ
- 消費税申告書は第一表・第二表と付表のセットで、一般課税は付表1-3・2-3を使う
- 期限は課税期間終了後2か月以内で、延長特例を受ければ1か月延長できる
- 課税標準額は千円未満、差引税額は百円未満を切り捨て、地方消費税は22/78で計算する
- 付表→第二表→第一表の順に作り、中間納付税額を忘れない
- 税区分のチェックと経過措置(80%・70%)の区分が正確な申告の土台
まずは消費税集計表と総勘定元帳の突合から始めてみてください。
消費税は毎期必ずやってくる申告です。流れとチェックの型を作って、来期はもっと楽に締めましょう。








