役員報酬で節税する方法とは?定期同額給与と事前確定届出給与を解説

役員報酬は、会社の利益と役員個人の手取りの両方に影響する大切なお金です。一方で、役員報酬は従業員の給与と違い、決められたルールどおりに支給しないと会社の損金(経費)にならないという特徴があります。

「期の途中で業績がよくなったから報酬を上げたい」「決算前に役員賞与を出して利益を調整したい」と考える方もいるかもしれませんが、こうした支給のしかたは損金にならない代表例です。知らずに実行すると、節税どころか税負担が増えてしまいます。

この記事では、役員報酬を損金にするための基本ルールである定期同額給与と事前確定届出給与を中心に、改定のタイミングや届出期限、実務で押さえたいポイントを2026年9月時点の制度にもとづいて解説します。

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役員報酬は「いくらにするか」より先に「いつ・どう決めるか」が大事です。ルールを知っておくと、無理なく節税につなげられますよ。

この記事でわかること
  • 役員報酬を損金にするための3つのルール
  • 定期同額給与の改定ができるタイミング
  • 事前確定届出給与の届出期限と注意点
  • 役員報酬を決めるときの実務のポイント
目次

役員報酬の基本と損金にするための3つのルール

役員報酬について話し合う経営者

なぜ役員報酬にはルールがあるのか

役員は自分で自分の報酬を決められる立場にあります。もし自由に金額を変えて損金にできると、利益が出そうなときだけ報酬を増やして法人税を減らす、といった調整ができてしまいます。そこで法人税法では、損金にできる役員給与の形を限定しています。

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ルールが厳しく感じるかもしれませんが、「利益調整を防ぐため」という目的がわかると、覚えやすくなりますよ。

税務上の「役員」の範囲

ここでいう役員は、取締役・監査役などの会社法上の役員だけではありません。法人税では、同族会社で経営に従事している一定の大株主なども「みなし役員」として扱われます。一方で、「執行役員」という肩書きの人は、多くの場合、会社法上の役員ではなく従業員として扱われます。肩書きではなく、実際の地位や職務内容で判断する点に注意しましょう。

みなし役員に注意

同族会社では、役員として登記されていない家族などでも、一定の株式を持ち経営に従事していれば、税務上は役員として扱われることがあります。

その場合は、その人への給与にも役員給与のルールが適用されます。

損金にできる役員給与は3種類

種類内容主な対象
定期同額給与1か月以下の一定期間ごとに、同額を支給する給与ほとんどの会社の毎月の役員報酬
事前確定届出給与所定の時期に確定額を支給する旨を、事前に税務署へ届け出た給与役員賞与
業績連動給与利益などの客観的な指標にもとづいて算定する給与一定の要件を満たす会社に限られる

業績連動給与は要件が厳しく、同族会社の多くの中小企業では使いにくい制度です。そのため中小企業では、定期同額給与と事前確定届出給与の2つを押さえておけば十分です(国税庁 No.5211)。

定期同額給与:毎月同じ額を支給するのが原則

給与明細と書類

定期同額給与の基本

定期同額給与は、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、事業年度内の各支給時期の支給額が同額である給与です。源泉所得税や社会保険料などを差し引いた手取り額が同額であるものも含まれます。

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毎月同じ額を支払っていれば、原則は定期同額給与になります。まずは「期中に金額を変えない」を基本にしましょう。

改定できる3つのケース

事業年度の途中で金額を変えられるのは、次のような場合に限られます。

改定の種類内容
通常改定事業年度開始の日から3か月以内に行う改定(定時株主総会での決定など)
臨時改定役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更など、やむを得ない事情による改定
業績悪化改定経営状況が著しく悪化したことなどによる減額改定

多くの会社では、決算後の定時株主総会で新しい事業年度の報酬額を決め、その翌月分から改定する流れになります。期首から3か月を過ぎてから決議すると原則として通常改定にあたらないので、株主総会の日程にも気を配りましょう。

3月決算の会社の改定スケジュール例

3月決算の会社なら、事業年度開始の日(4月1日)から3か月以内、つまり6月末までに改定を行う必要があります。

5月から6月に開く定時株主総会で新しい報酬額を決め、その翌月の支給分から改定する、という流れが一般的です。

期中に増額・減額するとどうなる?

上記以外の改定は損金にならない部分が出る

たとえば期の途中で「業績がよいから」と報酬を増額すると、増額した部分は損金になりません。

業績悪化改定は、単に利益が予想より少ないといった理由では認められにくく、資金繰りの悪化や取引先との関係など、客観的な事情が必要とされます。判断に迷うときは、改定前に税理士に相談しましょう。

事前確定届出給与:役員賞与を損金にする方法

税務署に届出書を提出する様子

「審査」ではなく「届出」の制度

役員賞与は、原則として損金になりません。ただし、支給時期と金額をあらかじめ決めて税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、そのとおりに支給すれば損金にできます。税務署が内容を審査して許可する制度ではなく、期限までに届け出て、届出どおりに支給することが要件です。

届出の期限

届出期限は原則として、株主総会などで支給を決議した日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日です(国税庁 No.5211)。期限を1日でも過ぎると、その賞与は損金になりません。

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期限は「決議から1か月」と「期首から4か月」の早いほうです。株主総会の日程が決まったら、届出期限もすぐカレンダーに入れておきましょう。

支給までの流れ

STEP
株主総会などで決議する

支給する役員、支給時期、金額を決め、議事録に残します。

STEP
期限内に届出書を提出する

「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出します。e-Taxでも提出できます。

STEP
届出どおりの日・金額で支給する

届出と異なる金額や時期で支給すると、原則としてその全額が損金になりません。多く払った場合だけでなく、少なく払った場合も同じです。

業績が悪くなって届出額を払えなくなった場合でも、減額支給はそのまま損金になるわけではありません。届出額は無理のない金額に設定しましょう。

役員報酬を決めるときの実務のポイント

役員報酬を試算する電卓

法人税だけでなく個人の税金と社会保険料も見る

役員報酬を増やせば会社の法人税は減りますが、役員個人の所得税・住民税や社会保険料は増えます。報酬を下げれば逆の動きになります。会社と個人の負担を合計して考えることが、役員報酬で節税を考えるときの出発点です。最適な金額は会社の利益水準や家族構成などで変わるため、一律の正解はありません。

議事録と支給記録をそろえておく

定期同額給与も事前確定届出給与も、「いつ、誰が、いくらに決めたか」を説明できることが大切です。株主総会や取締役会の議事録、届出書の控え、支給の記録をセットで保存しておきましょう。

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議事録は「あとで作ればいい」と後回しにしがちですが、いつ決めたかを示す大切な証拠になります。決議したらすぐ作成しておきましょう。

給与計算システムでのチェック

実務では、給与計算システムに役員の支給額を登録しておき、期中に金額が変わっていないか、事前確定届出給与の支給日と金額が届出と一致しているかを確認します。支給日が届出とずれると要件を満たさないと判断されるおそれがあるので、支給前のダブルチェックが有効です。

  • 事業年度開始から3か月以内に報酬額を決めたか
  • 議事録に支給額と改定時期が記載されているか
  • 事前確定届出給与の届出期限と支給日を管理しているか
  • 支給額・支給日が届出書と一致しているか
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役員報酬は会社ごとの事情で最適解が変わります。金額の決定や改定を検討するときは、事前に顧問の税理士さんに相談するのがおすすめです。

役員報酬でよくあるミス

役員報酬のトラブルは、制度を知らなかったというより、ちょっとした段取りのずれから起きることが多いものです。次のようなミスがないか確認しておきましょう。

よくあるミス

  • 株主総会などで決議をしないまま、翌月から報酬額を変えてしまう
  • 期の途中で業績がよいからと報酬を増額し、増額分も損金にしてしまう
  • 事前確定届出給与を、届出書と異なる金額で支給してしまう
  • 事前確定届出給与の支給日を、届出と違う日にずらしてしまう

どれも、あとから気づいても取り消しがききにくいミスです。支給額や支給日を変えたくなったときは、実行する前に要件を確認し、必要に応じて税理士に相談する習慣をつけましょう。

まとめ

  • 役員報酬は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の形でないと損金にならない
  • 定期同額給与の改定は、期首から3か月以内の通常改定などに限られる
  • 事前確定届出給与は期限内に届け出て、届出どおりに支給することが要件
  • 会社の法人税と、役員個人の税金・社会保険料を合計して考える

役員報酬は、ルールを守れば会社にとっても役員にとっても無理のない形で税負担を調整できる仕組みです。逆に、期中の変更や届出の不備があると損金にならず、かえって負担が増えてしまいます。毎年の報酬決定のタイミングで、今回紹介したポイントを確認してみてください。

ティー

決算が終わったら、次の期の役員報酬を決める準備を始めるのがおすすめです。期首から3か月の期限は意外とあっという間ですよ。

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