【簿記1級受験者必見】自己株式と新株予約権の仕訳|処分・消却・権利行使を解説

自己株式と新株予約権は、簿記1級の株式会社会計で頻出の論点です。「処分差損はどこから減らすの?」と迷う受験者も多いはずです。

この記事では、自己株式と新株予約権の仕訳を数値例で整理します。試験の解き方と実務のポイントもあわせて解説します。

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どちらも「純資産の部のどこに載るか」を押さえると、仕訳がぐっと楽になります。

この記事でわかること
  • 自己株式の取得・処分・消却の仕訳と、その他資本剰余金の扱い
  • 新株予約権の発行・権利行使・失効の仕訳(新株発行と自己株式の交付)
  • ストック・オプションの費用計上と新株予約権付社債の一括法・区分法
  • 簿記1級で点を落とさない解き方のコツとよくあるミス
  • 自己株式取得の手続きや開示など実務のチェックリスト
目次

自己株式とは?取得時の仕訳と純資産の部の表示

投資の文字を虫眼鏡で見るイメージ

自己株式とは、会社が保有している自社の株式のことです。企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」では、自己株式の取得を株主との資本取引と考え、資産ではなく純資産の部の株主資本から控除します。

場面会計処理根拠
取得取得原価で計上し、株主資本から控除第7項
期末の表示株主資本の末尾に自己株式として一括控除第8項
処分差益はその他資本剰余金、差損はその他資本剰余金から減額第9項・第10項
消却帳簿価額をその他資本剰余金から減額第11項
付随費用取得・処分・消却とも営業外費用第14項

取得時の仕訳と付随費用

自己株式1,000株を1株1,200円で取得し、証券会社の手数料12,000円とあわせて支払った場合の仕訳です(仮の数値)。

自己株式の取得
(借)自己株式 1,200,000 /(貸)現金預金 1,212,000
(借)支払手数料 12,000

手数料は取得原価に含めず営業外費用とします。取得の認識は、対価が金銭の場合は対価を支払うべき日です(適用指針第2号第5項)。

自己株式は資産に計上しない

自己株式は株主資本の末尾にマイナスで表示します。連結子会社が持つ親会社株式も、親会社持分相当額を自己株式として株主資本から控除します(第15項)。

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「有価証券っぽいけど資産じゃない」が最初のつまずきです。資本の払戻しと考えると覚えやすいですよ。

自己株式の処分・消却の仕訳|その他資本剰余金の扱い

仕訳帳と電卓で仕訳を確認する様子

先ほどの1,000株(帳簿価額1株1,200円)を、次のように処分・消却したとします。期首のその他資本剰余金は200,000円です(仮の数値)。

取引株数対価帳簿価額処分差額
処分①400株@1,500円=600,000円480,000円差益120,000円
処分②300株@1,000円=300,000円360,000円差損60,000円
消却300株なし360,000円-

処分差益・処分差損の仕訳

処分①(差益)
(借)現金預金 600,000 /(貸)自己株式 480,000
(貸)その他資本剰余金 120,000

処分②(差損)
(借)現金預金 300,000 /(貸)自己株式 360,000
(借)その他資本剰余金 60,000

処分差益はその他資本剰余金に計上し、差損はその他資本剰余金から減額します。損益計算書には載りません。

消却の仕訳と期末の補填

消却
(借)その他資本剰余金 360,000 /(貸)自己株式 360,000

消却は、消却手続が完了したときに帳簿価額をその他資本剰余金から減額します。期末のその他資本剰余金は、200,000+120,000-60,000-360,000=-100,000円です。

その他資本剰余金がマイナスになったときは、会計期間末に零とし、負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額します(第12項)。

期末の補填
(借)繰越利益剰余金 100,000 /(貸)その他資本剰余金 100,000

補填は期末にまとめて行う

補填は会計期間末の残高で判定します。期中に一時的にマイナスでも、期末にプラスなら補填は不要です。

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その他資本剰余金のT勘定を書いて、期末残高の符号を確認するクセをつけましょう。

新株予約権の会計処理|発行・権利行使・失効の仕訳

契約書にサインする様子

新株予約権は、決められた価格で株式の交付を受けられる権利です。発行者側では、払込金額を純資産の部に「新株予約権」として計上します(適用指針第17号第4項)。株主資本以外の項目です。

次の仮の数値で確認します。

項目内容
発行100個×@20,000円=2,000,000円
1個あたりの株数・行使価格100株・1株800円
行使①60個を行使、新株を発行
行使②30個を行使、自己株式(帳簿価額1株900円)を交付
失効10個が行使されずに満了

発行時と新株を発行する権利行使の仕訳

発行時
(借)現金預金 2,000,000 /(貸)新株予約権 2,000,000

新株を発行する場合は、新株予約権の帳簿価額と行使時の払込金額の合計を資本金(または資本金と資本準備金)に振り替えます。ここでは会社法上の最低額(2分の1)を資本金とします。

行使①(新株発行)
(借)新株予約権 1,200,000 /(貸)資本金 3,000,000
(借)現金預金 4,800,000 /(貸)資本準備金 3,000,000

自己株式を交付する権利行使の仕訳

自己株式を交付する場合は、新株予約権+払込金額を処分の対価と考え、自己株式の帳簿価額との差額を自己株式処分差額として処理します。

行使②(自己株式の交付)
(借)新株予約権 600,000 /(貸)自己株式 2,700,000
(借)現金預金 2,400,000 /(貸)その他資本剰余金 300,000

失効時の仕訳

失効
(借)新株予約権 200,000 /(貸)新株予約権戻入益 200,000

権利行使期間が満了して失効した分は、失効が確定した期の利益(原則として特別利益)とします(第6項)。

取得者側は有価証券として処理

新株予約権を取得した側は、有価証券の取得として処理します(第7項)。

場面発行者側取得者側
発行・取得時純資産の部に新株予約権有価証券として計上
権利行使時資本金等へ振替、または自己株式処分差額を計算保有目的に応じて株式へ振替
失効時新株予約権戻入益(利益)帳簿価額を損失として処理
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発行者側は「純資産」、取得者側は「資産」。同じ新株予約権でも立場で正反対になります。

ストック・オプションと新株予約権付社債の仕訳

グラフの前で報酬制度を説明する社員

ストック・オプションは勤務期間で費用を配分する

ストック・オプションは、従業員などに報酬として付与する新株予約権です。企業会計基準第8号では、公正な評価単価×ストック・オプション数(失効見込みを控除)で公正な評価額を求め、対象勤務期間を基礎に各期の費用(株式報酬費用)と新株予約権を計上します(第4項・第5項)。

X1年4月1日に従業員50名へ1人100個(1個で1株)を付与し、公正な評価単価は1個600円、権利確定日はX3年3月31日(対象勤務期間2年)とします。付与時の退職見込みは5名、実際の権利確定は46名です(仮の数値)。

年度計算株式報酬費用
X1年度600円×4,500個×12/241,350,000円
X2年度(権利確定)600円×4,600個-1,350,000円1,410,000円
累計600円×4,600個2,760,000円

X1年度末
(借)株式報酬費用 1,350,000 /(貸)新株予約権 1,350,000

X2年度末(権利確定日)
(借)株式報酬費用 1,410,000 /(貸)新株予約権 1,410,000

権利確定日には見込数を権利確定数に合わせて調整します(第7項)。その後、30名分3,000個が行使価格1株2,000円で行使され、残り1,600個が失効したとします。

権利行使(新株発行・2分の1を資本金)
(借)新株予約権 1,800,000 /(貸)資本金 3,900,000
(借)現金預金 6,000,000 /(貸)資本準備金 3,900,000

権利確定後の失効
(借)新株予約権 960,000 /(貸)新株予約権戻入益 960,000

新株予約権付社債は一括法と区分法

新株予約権付社債の発行者側の処理は、種類によって次のように分かれます(適用指針第17号第18項・第21項)。

種類発行者側の処理権利行使時
転換社債型一括法(普通社債に準じる)または区分法社債の帳簿価額(+新株予約権)を資本金等へ振替
その他の新株予約権付社債区分法のみ区分法を採用した転換社債型に準じる

転換社債型を10,000,000円で発行し、区分法で社債部分を9,400,000円とした場合の仕訳です。

区分法による発行
(借)現金預金 10,000,000 /(貸)社債 9,400,000
(貸)新株予約権 600,000

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ストック・オプションは「付与日の単価は固定、数だけ見直す」と覚えておけば、計算の迷いが減ります。

簿記1級で自己株式・新株予約権を解くコツとよくあるミス

簿記検定の勉強をするイメージ

日商簿記1級の出題区分表では、自己株式・自己新株予約権、新株予約権付社債、株式引受権・新株予約権・ストック・オプションが株式会社会計の範囲に含まれています。純資産の部の区分を頭に置いて解くのがコツです。

よくあるミス正しい処理
処分差益を資本準備金や営業外収益にするその他資本剰余金に計上
自己株式の取得手数料を取得原価に含める営業外費用
自己株式を交付した行使で資本金を増やす資本金は増えず、処分差額をその他資本剰余金で処理
新株予約権を株主資本に含める株主資本以外の項目として表示
権利確定前の見込数の変更を失効益にする見直した期の株式報酬費用で調整

新株発行と自己株式の処分を同時に行う場合

募集株式1,000株を1株1,000円で発行し、うち600株は新株、400株は自己株式(帳簿価額1株1,100円)を充てたとします。会社計算規則第14条により、払込金額を株式数で按分し、処分差損は資本金等増加限度額から控除します。

計算項目金額
株式発行割合600株÷1,000株=60%
自己株式対価額1,000,000円×40%=400,000円
処分差損440,000円-400,000円=40,000円
資本金等増加限度額600,000円-40,000円=560,000円

同時発行の仕訳(2分の1を資本金)
(借)現金預金 1,000,000 /(貸)資本金 280,000
(貸)資本準備金 280,000
(貸)自己株式 440,000

同時発行では差損をその他資本剰余金に計上しない

単独の処分なら差損はその他資本剰余金から減額しますが、新株発行と同時なら資本金等増加限度額から控除します。問題文の「同時に」を見落とさないようにしましょう。

資本金の2分の1と端数に注意

「会社法規定の最低額を資本金とする」とあれば2分の1を資本金、残りを資本準備金にします。権利行使時に1株未満の端数を金銭で精算する場合は、その金額をその他資本剰余金から減額します(適用指針第17号第5項)。

記事の数値例はすべて仮の数値です。資本金に計上する額や端数の扱いは、試験では問題文の指示に従ってください。

ストック・オプションの費用は税務上すぐには損金にならないため、税効果会計とも関連します。

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株主資本等変動計算書の問題では、どの列が動くかを先にメモすると速く解けます。

自己株式・新株予約権の実務|手続き・開示・チェックリスト

パソコンで株式の管理台帳を確認する経理担当者

自己株式取得の手続きと分配可能額

実務では会社法の手続きと財源規制を守る必要があります。

論点内容根拠
株主との合意による取得株主総会で株数・対価の総額・期間(1年以内)を決議会社法156条
市場取引等による取得定款に定めれば取締役会決議で可能会社法165条
財源規制交付する金銭等の帳簿価額は分配可能額以内会社法461条
消却取締役会設置会社は取締役会で消却株数を決議会社法178条

分配可能額の計算では、保有する自己株式の帳簿価額を控除します。取得前に試算しておきましょう。

信託口の自己株式・ストック・オプション台帳・開示

株式給付信託などの信託口が持つ自社株式も自己株式として表示しますが、会社が直接持つ自己株式とは帳簿価額を通算しないため、別管理が必要です。ストック・オプションは回号ごとに付与数・行使数・失効数・評価単価を台帳で管理し、注記(第8号第16項)に使います。株主資本等変動計算書の注記では自己株式の株式数の増減も開示します。

新株予約権の権利行使時の処理の流れ

STEP
行使請求と払込みを確認する

株主名簿管理人などから行使請求の内容を受け取り、入金を確認します。

STEP
交付する株式を決める

新株を発行するか、自己株式を交付するかを確認します。両方なら株式発行割合を計算します。

STEP
資本金等の額を計算する

新株予約権の帳簿価額と払込金額から資本金等増加限度額や処分差額を求め、資本金に計上する額を決めます。

STEP
仕訳を計上する

新株予約権の取崩し、資本金・資本準備金、自己株式、その他資本剰余金の仕訳を起票します。

STEP
台帳と開示を更新する

台帳の残数を減らし、登記や株主資本等変動計算書・注記に反映します。

自己株式・新株予約権の決算チェックリスト

  • 自己株式の取得手数料を営業外費用で処理しているか
  • 期末のその他資本剰余金が負になっていないか
  • 信託口の株式を会社保有分と分けて管理しているか
  • 新株予約権の残高が台帳の未行使数と一致しているか
  • 権利確定日に見込数を権利確定数に合わせたか
  • 株主資本等変動計算書と注記の株式数が一致しているか
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会計システムでは、回号・信託口ごとに補助科目を分けておくと変動計算書の作成が楽になります。

まとめ

  • 自己株式は取得原価で株主資本から控除し、付随費用は営業外費用とする
  • 処分差益・差損と消却はその他資本剰余金で処理し、期末に負なら繰越利益剰余金で補填する
  • 新株予約権は純資産の部に計上し、行使時は資本金等へ振替、自己株式なら処分差額を計算する
  • ストック・オプションは公正な評価額を対象勤務期間で配分し、確定後の失効は戻入益とする
  • 新株発行と自己株式の処分が同時なら、株式発行割合で按分し差損は資本金等増加限度額から控除する

まずは数値例の仕訳を自分で書いてみてください。

ティー

試験も実務も、純資産の部の地図が頭に入っていれば怖くありません。

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