簿記1級のリース会計は、判定・現在価値・利息法・減価償却が一度に問われるため、苦手にする人が多い論点です。さらに新リース会計基準の公表で「いま何を覚えればいいのか」と迷う声もよく聞きます。
この記事では、上場企業で経理をしている私の目線で、2026年度と2027年度の出題範囲の違いを整理したうえで、借手・貸手の処理を数値例と仕訳で確認します。電卓での速算や、試験と実務のギャップにも触れます。内容は2026年10月時点の公表情報にもとづいています。
リースは「判定→計上額→返済表→仕訳」の型さえ身につければ、得点源にできる論点ですよ。
- 簿記1級で出るリース論点と、新リース会計基準が出題範囲に入る時期
- ファイナンス・リースの判定基準と所有権移転の有無による違い
- 借手・貸手の処理を数値例と仕訳で確認する方法
- 電卓での現在価値の速算と、間違えやすいポイント
簿記1級のリース会計はどこまで出る?2026年度と2027年度の出題範囲


出題される基準は、受験する時期によって変わります。
2026年度の試験は旧基準(第13号)で出題される
日本商工会議所は、2026年度試験(2027年3月31日まで)には2022年度版の出題区分表を適用するとしています。1級の統一試験は年2回で、2026年11月15日の第174回が旧基準で受けられる最後の1級試験です。
2022年度版の区分表では、1級のリースとして「ファイナンス・リース取引の貸手側の処理」と「セール・アンド・リースバック取引など」が示されています。
11月に受ける方は、新基準の勉強を後回しにして、旧基準の型を固めるのが近道です。
2027年度の試験から新リース会計基準に切り替わる
日本商工会議所は2026年7月31日に、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の適用にともなう2027年度の出題区分表の確定版を公表しました(暫定版は2025年12月25日)。2027年4月1日以降の試験に適用されます。
| 項目 | 2026年度試験まで | 2027年度試験から |
|---|---|---|
| 準拠する基準 | 企業会計基準第13号 | 企業会計基準第34号 |
| 借手の勘定科目 | リース資産・リース債務 | 使用権資産・リース負債 |
| 1級で明示された論点 | 貸手の処理、セール・アンド・リースバックなど | 貸手の処理(ファイナンス・リース、オペレーティング・リース)、サブリース、借地権の処理など |
| 短期・少額リース | 簡便的な取扱い | 2級以上で出題されうると明示 |
改定の説明書では、リースの識別、リース期間の決定、契約変更は2級での出題が明示されていないため1級で出題されるとされています。
リースの基礎知識:分類と判定基準


ファイナンス・リースとオペレーティング・リース
旧基準では、解約不能(ノンキャンセラブル)とフルペイアウトの2つを満たすリース取引をファイナンス・リース取引とし、それ以外をオペレーティング・リース取引としています。ファイナンス・リースは売買処理、オペレーティング・リースは賃貸借処理です。
判定は現在価値基準90%と経済的耐用年数基準75%
ファイナンス・リースの判定基準
- 現在価値基準:解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、見積現金購入価額の概ね90%以上
- 経済的耐用年数基準:解約不能のリース期間が、経済的耐用年数の概ね75%以上
どちらか一方に当てはまればファイナンス・リースと判定します。
たとえば年1,000,000円・5年のリースで、現在価値が4,451,822円、見積現金購入価額が4,500,000円なら、98.9%で90%以上です。経済的耐用年数が6年なら5÷6=83.3%で、75%基準も満たします。
所有権移転かどうかで処理が変わる
ファイナンス・リースは、所有権移転条項、割安購入選択権、特別仕様のいずれかに当てはまれば所有権移転ファイナンス・リースとなり、それ以外は所有権移転外ファイナンス・リースです。
| 項目 | 所有権移転 | 所有権移転外 |
|---|---|---|
| 計上額(貸手の購入価額が明らか) | 貸手の購入価額 | 貸手の購入価額と現在価値の低い方 |
| 計上額(不明な場合) | 現在価値と見積現金購入価額の低い方 | 同左 |
| 耐用年数 | 経済的耐用年数 | リース期間 |
| 残存価額 | 自己所有の資産と同じ | ゼロ(残価保証があれば残価保証額) |
「移転外はリース期間・残存ゼロ」は、試験でも実務でも一番よく使う組み合わせです。
借手の会計処理を数値例で確認


所有権移転外ファイナンス・リースで、借手が期首にリースを開始した例です。リース期間5年、リース料は年1,000,000円の後払い、見積現金購入価額4,500,000円、貸手の購入価額は不明、追加借入利子率は年4%とします。
計上額は現在価値と見積現金購入価額の低い方
リース料総額5,000,000円を4%で割り引いた現在価値は4,451,822円(円未満四捨五入)です。見積現金購入価額4,500,000円より低いため、4,451,822円でリース資産とリース債務を計上します。利息相当額の総額は5,000,000円-4,451,822円=548,178円です。
利息法による返済表
| 年 | 期首残高 | 支払利息(4%) | 元本返済 | 期末残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 4,451,822 | 178,073 | 821,927 | 3,629,895 |
| 2 | 3,629,895 | 145,196 | 854,804 | 2,775,091 |
| 3 | 2,775,091 | 111,004 | 888,996 | 1,886,095 |
| 4 | 1,886,095 | 75,444 | 924,556 | 961,539 |
| 5 | 961,539 | 38,461 | 961,539 | 0 |
| 合計 | - | 548,178 | 4,451,822 | - |
利息は円未満を四捨五入し、最終年は残高がゼロになるよう端数を調整しています。
返済表は「利息の合計=リース料総額-計上額」になっているかを最後に確かめると、計算ミスにすぐ気づけます。
仕訳と減価償却
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| リース開始時 | リース資産 4,451,822 | リース債務 4,451,822 |
| 1年目のリース料支払時 | リース債務 821,927/支払利息 178,073 | 現金預金 1,000,000 |
| 1年目の決算時 | 減価償却費 890,364 | 減価償却累計額 890,364 |
減価償却は、所有権移転外なのでリース期間5年・残存価額ゼロの定額法で、4,451,822円÷5=890,364円(円未満切り捨て)です。所有権移転なら経済的耐用年数の6年で償却します。


前払・利子込み法・維持管理費用・残価保証
条件が変わるときの注意点
- 前払いなら1回目の支払いに利息は含まれません。この例を前払いにすると現在価値は4,629,895円となり、見積現金購入価額4,500,000円が計上額になるため、利率を計算し直します
- リース資産総額に重要性が乏しい所有権移転外では、利子込み法や利息の定額法による配分も認められます
- 固定資産税・保険料などの維持管理費用相当額は、原則としてリース料総額から控除します
- 残価保証があれば、残価保証額をリース料総額に含め、減価償却の残存価額にします
貸手の処理・セール・アンド・リースバック・中途解約


貸手の3つの方法は利息の額が同じになる
貸手は、所有権移転外ならリース投資資産、所有権移転ならリース債権を計上します。前の数値例を貸手から見て、4,451,822円で購入した物件を計算利子率4%でリースした場合の1年目の仕訳は次のとおりです。
| 方法 | 開始時 | 1年目の受取・決算時 |
|---|---|---|
| ①リース取引開始日に売上高と売上原価を計上 | リース投資資産 5,000,000/売上高 5,000,000、売上原価 4,451,822/買掛金 4,451,822 | 現金 1,000,000/リース投資資産 1,000,000、繰延リース利益繰入 370,105/繰延リース利益 370,105 |
| ②リース料受取時に売上高と売上原価を計上 | リース投資資産 4,451,822/買掛金 4,451,822 | 現金 1,000,000/売上高 1,000,000、売上原価 821,927/リース投資資産 821,927 |
| ③売上高を計上せず利息相当額を配分 | リース投資資産 4,451,822/買掛金 4,451,822 | 現金 1,000,000/リース投資資産 821,927・受取利息 178,073 |
3つの方法の共通点
どの方法でも、1年目の利益は178,073円で同じです。①は利息相当額548,178円のうち翌期以降の370,105円を繰り延べ、②は売上高と売上原価の差額が利息相当額になります。
新リース会計基準では、収益認識会計基準で割賦基準が認められなくなったことを踏まえ、②の方法は廃止されます。2027年度以降の受験では①と③を中心に押さえましょう。
セール・アンド・リースバック
資産を売却して同じ資産をリースで借りる取引で、リースバックがファイナンス・リースに当たる場合、売却損益は長期前払費用または長期前受収益として繰り延べ、リース資産の減価償却費の割合に応じて減価償却費に加減します。ただし、合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることによる売却損は、繰り延べずに売却時の損失とします。
中途解約
中途解約したときは、リース資産の未償却残高をリース資産除却損等として処理します。規定損害金を払う場合は、リース債務の未払残高(未払利息を含む)と規定損害金の差額を損益に計上します。
中途解約は「資産側の除却」と「債務側の精算」を分けて考えると、仕訳を組み立てやすくなります。
リースの解き方の手順と間違えやすいポイント


現在価値基準と経済的耐用年数基準を確認し、所有権移転の条件もチェックします。
現在価値と、貸手の購入価額または見積現金購入価額を比べます。
期首残高×利率で利息を出し、リース料との差額を元本返済とします。
支払時はリース債務と支払利息に分け、決算時は未払利息の計上も確認します。
所有権移転は経済的耐用年数、移転外はリース期間・残存価額ゼロです。
電卓で現在価値を速く出す手順
年金現価係数が与えられていないときは、電卓の定数計算を使います。カシオなら「1.04÷÷1,000,000=」、シャープなら「1,000,000÷1.04=」と押し、そのあと「=」を押すたびに1.04で割った値が出るので、毎回M+で足していきます。5回分の合計が現在価値です。
このとき出てくる961,538、924,556、888,996、854,804、821,927は、返済表の元本返済額を逆順に並べたものです。返済表の検算にも使えます。
試験で間違えやすいポイント
よくあるミス
- 所有権移転外なのに経済的耐用年数で償却してしまう
- 前払いなのに1回目の支払いにも利息を計上してしまう
- 決算日とリース料の支払日がずれるのに、未払利息を計上し忘れる
- 現在価値と見積現金購入価額を比べずに、現在価値をそのまま計上する
- 貸手の②の方法で、売上原価をリース料の全額にしてしまう
ミスの多くは条件の読み落としです。前払い・後払い、移転・移転外に印をつけてから解きましょう。
実務のリースと試験のギャップ


契約書で見るところ
実務では、判定に必要な数字が問題文のようにそろっていません。契約書では、リース期間と中途解約の可否、リース料の支払条件、所有権移転や購入選択権の条項、残価保証、保守料や保険料が含まれているかを確認します。
リース台帳と固定資産台帳、簡便処理
リース資産はリース台帳で管理し、返済表と減価償却を月次で計上します。所有権移転外で1件当たりのリース料総額が300万円以下のものや、リース期間が1年以内のものは、賃貸借処理に準じた簡便処理が認められています。連結決算では、重要性の判定を連結の数値で見直すことができます。


法人税の扱いと新基準で変わること
法人税では、所有権移転外リース取引は売買とみなして、リース期間定額法で償却します。令和7年度税制改正により、オペレーティング・リースの借手は、会計上オンバランスしても、税務上は引き続き賃貸借取引として、債務の確定した支払額を損金に算入することになりました(法人税法第53条)。
新基準への移行を見据えた学習のコツ
現在価値・利息法・減価償却の計算は新基準でも同じように使います。2026年度に受ける人も、勘定科目が使用権資産・リース負債に変わること、借手はオペレーティング・リースも原則オンバランスになることだけは頭に入れておくと、合格後の実務にすぐつながります。
実務では、計算そのものより「契約書から条件を正しく拾うこと」に時間がかかります。試験の型はその土台になります。
まとめ
- 2026年11月15日の第174回までの1級は旧基準(第13号)、2027年度試験から新リース会計基準で出題
- 判定は現在価値基準90%と経済的耐用年数基準75%、所有権移転の有無で償却年数が変わる
- 借手は「判定→計上額→返済表→仕訳→減価償却」の順に解く
- 貸手の3つの方法は各期の利息相当額が同じで、新基準では②が廃止
- 電卓の定数計算で現在価値を出し、返済表の検算にも使う
リース会計は覚える量より、型を繰り返して手を慣らすことが大切な論点です。受験する時期に合った基準のテキストで、数値例を自分で解き直してみてください。
簿記1級で身につけたリースの知識は、新基準の導入を控えた経理の現場でそのまま役立ちますよ。









