10〜11月は、上場会社の経理にとって半期報告書の季節です。「有価証券報告書と比べてどこまで書けばいいのか」と迷う声をよく聞きます。
上場企業の経理で会計システムにも関わる私の目線で、半期報告書の制度・有価証券報告書との違い・中間決算から提出までの実務を、3月決算会社のスケジュール例を使って整理します。
半期報告書は「有報のミニ版」ではありません。半年間の変化を中心に書く書類だと考えると、勘所が見えてきます。
- 2024年4月以降の半期報告書の制度と提出期限
- 第1・第3四半期決算短信とレビューの扱い
- 半期報告書と有価証券報告書の違い(比較表)
- 中間決算から半期報告書の提出までのスケジュール例
- 中間連結財務諸表の作成で使える特有の処理・簡便的な処理
- 作業分担・数字の整合チェック・よくあるミスと作成の5ステップ
半期報告書とは?2024年4月からの制度と提出期限


半期報告書とは、事業年度の開始から6か月間の企業集団の経理の状況などを記載し、内閣総理大臣(実務上は財務局)に提出する書類です。根拠は金融商品取引法第24条の5第1項で、有価証券報告書を提出する会社が対象です。
2023年の金商法改正(令和5年法律第79号、2024年4月1日施行)で、第1・第3四半期の四半期報告書は廃止されました。第2四半期は四半期報告書に代わって、上場会社も半期報告書を提出する形になっています。
| 会社の区分 | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 上場会社等(下記を除く) | 中間期末後45日以内 | 金商法第24条の5第1項の表第1号 |
| 上場会社等のうち銀行・保険など | 中間期末後60日以内 | 同表第2号 |
| 上場会社等以外(非上場の継続開示会社) | 中間期末後3か月以内 | 同表第3号 |
上場会社(内国会社)の様式は、企業内容等の開示に関する内閣府令の第四号の三様式です。中間連結財務諸表には監査人の期中レビューが必要で、期中レビュー報告書を添付します。
第1・第3四半期は、取引所規則の四半期決算短信だけになりました。東証の作成要領(2026年7月版)をもとに整理すると次のとおりです。
| 四半期 | 開示書類 | 開示・提出の時期 | 監査人の関与 |
|---|---|---|---|
| 第1四半期 | 四半期決算短信 | 四半期末後45日以内が原則 | レビューは原則任意 |
| 第2四半期(中間期) | 中間決算短信+半期報告書 | 半期報告書は中間期末後45日以内 | 半期報告書は期中レビューが必要(短信はレビューの対象外) |
| 第3四半期 | 四半期決算短信 | 四半期末後45日以内が原則 | レビューは原則任意 |
| 第4四半期(通期) | 決算短信+有価証券報告書 | 短信は遅くとも45日以内、有報は3か月以内 | 有報は監査が必要 |
第1・第3四半期のレビューは、直近の有報・半期報告書で無限定適正意見以外が付いた場合や、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合、有報・半期報告書を期限内に出せなかった場合などに義務になります(東証の上場規程施行規則第405条第2項)。
前任者の資料が四半期報告書のままになっていないか
2024年3月以前のスケジュール表やチェックリストには「四半期報告書」「四半期レビュー報告書」が残っていることがあります。半期報告書用に置き換えてから使いましょう。
開示書類の全体像や、法律ごとの開示マップは次の記事で解説しています。


第1・第3四半期は短信だけになって楽になりましたが、そのぶん第2四半期の半期報告書の重みは増しています。
半期報告書と有価証券報告書の違い


半期報告書と有価証券報告書は、どちらも金商法の法定開示書類です。違いを一言でいうと、有報は1年分をすべて書く書類、半期報告書は半年間の変化を中心に書く書類です。
| 項目 | 半期報告書 | 有価証券報告書 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 期首から6か月間 | 事業年度(1年間) |
| 提出期限(上場会社) | 中間期末後45日以内 | 事業年度経過後3か月以内 |
| 監査人の関与 | 期中レビュー(期中レビュー報告書) | 監査(監査報告書) |
| 財務諸表 | 中間連結BS・PL(包括利益)・CF。株主資本等変動計算書はなし | 連結・個別の財務諸表と附属明細表一式 |
| 記載の詳しさ | 重要な変更・異動があった事項が中心 | 全項目を網羅的に記載 |
| サステナビリティ等 | 見積り値と確定値の差異を任意で書ける欄 | サステナビリティ・人的資本などの記載が必要 |
| 一緒に出す書類 | 確認書 | 確認書・内部統制報告書 |
| 株主総会との関係 | なし | 総会の前後に提出(総会前の提出も広がっている) |
記載の詳しさの違いは、様式の記載上の注意に表れています。例えば「事業等のリスク」は、新たなリスクが発生した場合や、前期の有報から重要な変更があった場合に書きます。「役員の状況」も、有報の提出後に異動があった場合だけです。
| 第四号の三様式の構成 | 主な記載内容 | 主な担当 |
|---|---|---|
| 第1 企業の概況 | 主要な経営指標等の推移、事業の内容の重要な変更 | 経理 |
| 第2 事業の状況 | 事業等のリスク、経営者による分析(MD&A)、重要な契約等 | 経理・経営企画・IR |
| 第3 提出会社の状況 | 株式等の状況、大株主、議決権、役員の異動 | 総務・法務 |
| 第4 経理の状況 | 中間連結財務諸表と注記、期中レビュー報告書 | 経理 |
中間連結財務諸表を作る会社は、中間個別財務諸表の開示は不要です。比較の相手は、BSが前年度末、PLとCFが前年同中間期になります。
半期報告書は「前期の有報からの差分」で考える
前期の有報と前年の半期報告書を並べ、「変わったこと」を各部署から集めると効率的です。変化がない項目まで有報並みに書く必要はありません。
有価証券報告書の構成や作成スケジュールは、次の記事で詳しく解説しています。


初めて担当したとき、私は前期の有報を縮めようとして苦労しました。差分で考えるほうが早いです。
決算から提出までの流れ|3月決算会社のスケジュール例


3月決算の上場会社を例に、年度決算と中間決算の1年の流れを並べます。期限は期末日の翌日から数えた日数です。
| 時期 | 年度決算(3月末) | 中間決算(9月末) |
|---|---|---|
| 期末後1〜2週間 | 単体・子会社の決算締め、連結決算 | 単体・子会社の中間決算締め、中間連結決算 |
| 4月下旬〜5月中旬 | 決算短信(遅くとも45日以内、30日以内がより望ましい) | - |
| 5月 | 会社法の計算書類・事業報告の作成と会計監査人の監査 | - |
| 6月下旬 | 定時株主総会、有価証券報告書の提出(3か月以内=6月30日) | - |
| 10月下旬〜11月上旬 | - | 中間決算短信、監査人の期中レビュー |
| 11月14日まで | - | 半期報告書の提出(45日以内) |
中間期末の9月30日から45日後は11月14日です。2026年は11月14日が土曜日にあたるため、休日の扱いに頼らず、前の営業日までに提出する計画にしておくと安心です。
提出はEDINETで行い、XBRLで作成します。上場会社は、記載内容が適正であることを確認した確認書を半期報告書と一緒に提出します(金商法第24条の5の2)。一方、内部統制報告書は有報と一緒に出す書類で、半期報告書にはありません。
中間決算短信に法定の期限はありませんが、東証は決算の内容が定まったら直ちに開示するよう求めており、遅くとも半期報告書の提出までに発表することになります。
短信と半期報告書の数字は一致させる
中間決算短信を先に出し、その後のレビューで修正が出ると、短信の訂正が必要になることがあります。短信の開示前に、監査人と主要な論点をすり合わせておきましょう。
決算短信のサマリー情報や開示時期のルールは、次の記事で詳しく解説しています。


私の会社では、短信の開示日から逆算してレビューの日程を先に押さえています。
中間連結財務諸表の作り方|中間特有の処理と簡便的な処理


上場会社の中間連結財務諸表には、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」と適用指針第32号(2024年3月公表)が適用されます。会計方針は年度と同じが原則ですが、簡便的な会計処理も認められています。
| 処理 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 税金費用の計算 | 年間の見積実効税率を税引前中間純利益に掛けて計算できる | 会計基準第18項 |
| 原価差異の繰延 | 季節的な変動による原価差異を、条件付きで繰り延べられる | 会計基準第17項 |
| 実地棚卸の省略 | 前年度の実地棚卸高を基礎に、合理的な方法で棚卸高を算定できる | 適用指針第6項 |
| 減価償却費 | 予算にもとづく年間償却予定額を期間按分できる | 適用指針第11項・第12項 |
| 退職給付費用 | 期首に算定した年間の費用を期間按分する | 適用指針第23項 |
| 連結の相殺消去 | 債権債務・取引の差異を一定の範囲で調整せずに消去できる | 適用指針第26項・第27項 |
税金費用の数値例です(仮の数値、単位:百万円)。年間の税引前当期純利益を2,000、税金費用を600と見積もると、見積実効税率は30.0%です。税引前中間純利益が900なら、中間の税金費用は900×30.0%=270、中間純利益は630になります。
中間の財務諸表には株主資本等変動計算書がないため、株主資本の金額に著しい変動があった場合は、主な変動事由を注記します。主な注記と確認ポイントは次のとおりです。
| 主な注記 | 実務での確認ポイント |
|---|---|
| セグメント情報 | 報告セグメントの売上高・利益が、本文のMD&Aの説明と合っているか |
| 収益の分解情報 | セグメント情報の売上高との関係が分かるか |
| 1株当たり中間純損益 | 期中平均株式数から自己株式を除いているか |
| 配当に関する事項 | 期末配当と中間配当の決議日・金額が正しいか |
| 株主資本の著しい変動 | 自己株式の取得・消却、増資などの事由が漏れていないか |
簡便的な処理は「継続」と「重要性」がセット
簡便的な処理は、毎期同じ方法で続けることが前提です。期中に固定資産の大きな取得や売却があったときなど、重要性があれば按分だけで済ませず実態を反映させましょう。
見積実効税率の方法は、年間の予想が大きく変わると数字もぶれます。業績予想の修正と合わせて見直してください。
経理の実務|作業分担・数字の整合チェック・よくあるミス


半期報告書は経理だけでは完成しません。各部署から情報を集め、期限までに1つの書類にまとめるのが経理の役割です。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 経理(連結・開示) | 中間連結財務諸表・注記・経営指標、全体の進行管理、EDINET提出 |
| 経営企画・IR | 経営者による分析(MD&A)、業績予想・中間決算短信との整合 |
| 総務・法務 | 株式等の状況、大株主、役員の異動、重要な契約・訴訟 |
| 監査法人 | 期中レビュー、期中レビュー報告書の作成 |
| 開示支援ベンダー | 開示書類作成支援システムの提供、様式改正の情報提供、XBRLの作成支援 |
多くの上場会社は、印刷会社などが提供する開示書類作成支援システムで開示書類を作っています。前回の書類を更新して作るため、前回の数字や日付が残るミスに注意が必要です。
| よくあるミス | 防ぎ方 |
|---|---|
| 前回の日付・期間の表記が残る | 「第○期中」「自・至」などの日付を一覧にして全件を置き換える |
| 短信と半期報告書の数字が合わない | 主要科目・1株当たり利益・従業員数などを突合表で照合する |
| 本文と財務諸表の数字が合わない | MD&Aの増減額・増減率を財務諸表から計算し直す |
| 四捨五入・切捨ての単位が混在 | 百万円未満の処理方法を書類ごとに決めて一覧にしておく |
| XBRLのタグや符号の誤り | EDINETのテスト提出で検証し、マイナス値の符号を目視でも確認する |
半期報告書の提出前チェックリスト
- 表紙の中間会計期間・提出日・代表者名が今回のものになっているか
- 主要な経営指標等の推移が、中間連結財務諸表の数字と一致しているか
- 中間決算短信と半期報告書で、売上高・利益・純資産が一致しているか
- 前年同中間期・前年度末の比較数値が、前回の書類と一致しているか
- セグメント情報の合計が、中間連結損益計算書と一致しているか
- 事業等のリスク・役員の状況などで、変更の有無を各部署に確認したか
- 期中レビュー報告書と確認書がそろっているか
- XBRLのテスト提出でエラーや警告が残っていないか
私は突合表を「短信→半期報告書→XBRL」の3列で作っています。どこで数字がずれたかがすぐ分かります。
半期報告書の作成の流れ5ステップ


中間期末から提出までは約45日です。中間決算の締めからEDINET提出までを、次の5ステップで進めます。
単体と連結子会社の中間決算を締めます。簡便的な処理が前回と同じ方法かも確認します。
連結精算表から中間連結BS・PL・包括利益計算書・CFを作り、セグメント情報や1株当たり中間純損益などの注記を作成します。
各部署から変更点を集め、本文を前回の書類から更新します。中間決算短信との整合も確かめます。
期中レビューの指摘を反映し、社内で定めた承認を受けます。確認書もこの段階で準備します。
XBRLのテスト提出で検証したうえで、期中レビュー報告書・確認書とともに、期限内に本番提出します。
レビューの指摘で数字が変わると、本文・注記・XBRLのすべてに反映が必要です。修正の履歴を一覧で管理しておきましょう。
提出が終わったら、今回の課題をメモに残しておきましょう。次の有報と来年の半期報告書が確実に楽になります。
まとめ
- 2024年4月から四半期報告書は廃止され、上場会社は第2四半期に半期報告書を中間期末後45日以内に提出する
- 第1・第3四半期は四半期決算短信だけになり、レビューは原則任意。一定の要件に当たると義務になる
- 半期報告書は半年間の変化を中心に書く書類で、期中レビューと確認書が必要。内部統制報告書は有報のみ
- 中間連結財務諸表では、見積実効税率による税金費用や実地棚卸の省略などの処理が認められている
- 短信・半期報告書・XBRLの数字の整合と、前回の日付や数字の残りを重点的にチェックする
まずは前期の有価証券報告書と前年の半期報告書を並べ、今期に変わった項目を洗い出すところから始めてみてください。
半期報告書を丁寧に作っておくと、期末の有報づくりの土台にもなります。一緒に乗り切りましょう。





