経費精算システムの選び方とは?比較ポイントと会計連携・電帳法対応のチェック表

経費精算システムは、従業員の立替払いや交通費の申請から、上司の承認、経理のチェック、仕訳・支払までをまとめて処理する仕組みです。製品が多く、機能の一覧だけでは自社に合うかを判断しにくいものです。

今回は、経費精算システムを比べて選ぶときの観点と、そのまま使えるチェック表・選定の進め方を解説します。会計システムとの連携や電子帳簿保存法・インボイス制度への対応、料金体系と費用対効果の考え方、無料トライアルで確かめることまで、経理実務に沿ってまとめました。

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経費精算の仕組みは全社員が毎月使います。申請画面の見やすさだけで決めると、仕訳の手直しが毎月残ることも。経理が見るべき観点を押さえてから比べましょう。

この記事でわかること
  • 選ぶ前に整理しておく自社の条件
  • 会計ソフト付属型・単体型・一体型の違いと向いている会社
  • 申請・承認・経理チェック・支払の機能チェック表
  • 会計連携・電帳法・インボイス対応の比較ポイント
  • 料金体系と費用対効果の設例
  • 選定の5ステップと評価表、トライアルで確かめること
目次

経費精算システムとは?選ぶ前に整理しておくこと

経費精算システムとは?(タイプ・機能・連携と法令対応)の図解

経費精算システムとは、経費の申請・承認・チェック・仕訳・支払・保存をデータでつなぐ仕組みです。導入の目的や業務フロー全体、メリット・デメリットは経費精算のDXとは?AIで変わる申請・承認・チェックの実務で解説しているので、この記事では製品を比べて選ぶ場面に絞ります。

比較の前に、自社の条件を整理シートにまとめます。条件が曖昧だと、デモで見た機能の多さに引っ張られ、必要な機能を見落としがちです。

整理する項目確認する内容選定への影響
利用人数・申請件数申請者と承認者の人数、月の申請件数料金体系(ユーザー数か件数か)
拠点・部門拠点数、部門・プロジェクトの数、海外出張の有無部門別の承認ルート、外貨対応
今の会計システム取り込める形式(CSV・API)と科目・部門の体系連携方式とマッピングの手間
承認ルート段数、金額による分岐、代理承認の運用ワークフロー設定の柔軟さ
支払手段の割合法人カード・交通系IC・立替の件数の比率明細取込や交通費機能の重要度
規程日当・宿泊上限・提出期限が数値で決まっているか規程違反アラートの設定範囲

特に支払手段の割合は見落とされがちです。立替が大半ならスマホでの領収書の読み取り、法人カードが多いなら明細の取込と申請への紐づけ、外出の多い部門があるなら交通費の経路検索が重要です。

紙の領収書をスマホで撮影してデータで保存する運用にするなら、スキャナ保存の要件にシステムが対応しているかも選定条件に入ります。要件の概要は国税庁「電子帳簿保存法関係 スキャナ保存関係」で確認できます。

経費精算システムのタイプと向いている会社|会計ソフト付属型・単体型・一体型

経費精算の仕組みのタイプを比べている打ち合わせの様子

経費精算の仕組みは、大きく「会計ソフト付属型」「単体型(専用サービス)」「ERP・ワークフロー一体型」の3つに分けられます。まずタイプで候補を絞ると比較が楽になります。

タイプ特徴向いている会社注意点
会計ソフト付属型会計ソフトと同じシリーズの精算機能。仕訳が会計に直接反映される中小規模で、会計ソフトを変える予定がない会社承認ルートや規程チェックの設定が単純になりやすい
単体型(専用サービス)経費精算に特化し、交通費・カード明細・スマホ申請の機能が充実利用者や申請件数が多く、会計ソフトを問わず使いたい会社会計への連携方式と、仕訳の手直しが残らないかを確認
ERP・ワークフロー一体型ERPや社内ワークフローの一機能として経費精算を扱う中堅・大企業、グループで同じ仕組みを使う会社導入と設定に時間がかかり、申請画面の使いやすさに差が出やすい

経費精算システムのタイプを決める3つの質問

どのタイプにするかは、次の3つの質問に順に答えると決めやすくなります。

  • 今の会計システムを、この先も数年は使い続けるか
  • 利用人数と申請件数に対して、申請画面の使いやすさをどこまで求めるか
  • 承認ルートや部門・プロジェクトの体系がどれだけ複雑か

ERPを使っている会社や、会計システムの入れ替えを考えている会社は、ERPと会計システムの違いと構成パターンもあわせて確認し、経費精算だけを先に決めて会計側と連携できない事態を防ぎましょう。

タイプは「今の会計システム」から逆算する

使い勝手は、仕訳の出口である会計システムとの相性で大きく変わります。会計ソフトを入れ替える予定があるなら、入れ替え後を前提に比べてください。

機能の比較ポイント|申請・承認・経理チェック・支払

経費精算の機能をチェックリストで比べている様子

機能は、申請・承認・経理チェック・支払の4つの場面に分けて比べます。表の「経理の重要度」が◎の項目は、仕訳の正確さや締めの早さに直結するため、経理が自分で確かめたい項目です。

場面機能確認するポイント経理の重要度
申請スマホ申請・領収書の読み取り(OCR)日付・金額・登録番号の読み取り精度○
申請交通費の経路検索・定期区間の控除運賃の自動計算と、定期区間を自動で差し引けるか◎
申請日当・宿泊費の計算規程の条件(距離・時間・役職)で自動計算できるか○
申請法人カード・交通系ICの明細取込明細と申請の紐づけ、立替との二重申請を防げるか◎
承認多段承認・金額による分岐金額や科目で承認者を切り替えられるか○
承認代理承認・差戻し不在時の代理承認と、差戻し理由の記録が残るか○
経理チェック規程違反アラート上限超えや提出期限切れを申請時点で警告できるか◎
経理チェック重複検知同じ日付・金額・支払先やカード明細との重複を検出できるか◎
経理チェック勘定科目・税区分の推定推定結果を一覧でまとめて修正できるか◎
経理チェック一括承認問題のない申請をまとめて処理できるか○
支払全銀データの作成振込データを銀行に取り込める形式で出せるか◎
支払給与合算・仮払精算給与との合算払いや仮払金の差額精算ができるか○

比べるときは、機能の有無より「経理が手で直す作業が残るか」を見ます。たとえば科目の推定機能があっても、推定結果を1件ずつ開かないと直せない仕様だと、月数百件の精算では確認に時間がかかります。

読み取り機能は自社の領収書で試す

読み取り精度は、感熱紙のかすれや手書き、宛名のない適格簡易請求書などで差が出ます。自社でよく出る領収書で試すのが確実です。読み取り精度を項目単位で考える方法は請求書のAI-OCRの読み取り精度の考え方が参考になります。

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経理チェックの機能は、自社の規程を設定できなければ使えません。日当や宿泊上限の条件を設定できるか、デモの場で聞いてみてください。

会計システム連携と法令対応の比較ポイント|仕訳・電帳法・インボイス

会計システムと経費精算データの連携を確認している様子

経理にとって製品ごとの差が最も大きいのは、仕訳の出口である会計システムとの連携です。出てきた仕訳を毎月手で直していては、効果が半減します。

確認項目確認する内容比べるときの注意
連携方式API連携かCSV出力か、取込は自動か手動かCSVは会計側の取込レイアウトに合わせられるか
仕訳の出力形式借方・貸方・税区分・摘要・部門が会計の項目に対応しているか摘要に入る内容と文字数
マスタのマッピング勘定科目・補助科目・部門・プロジェクト・税区分の対応表を持てるかマスタ変更のたびに両方の修正が要るか
仕訳の単位明細ごとか、申請ごと・支払日ごとに集約するか集約すると監査で明細を追いにくい
計上日利用日・承認日・支払日のどれで計上するか月をまたぐ申請の扱い

API連携とCSV連携の違いや、マッピング表の作り方は会計システムのAPI連携とは?CSV連携との違いで詳しく解説しています。

インボイス制度への対応

インボイス制度では、登録番号を国税庁の公表サイトの情報と照合できるか、適格請求書かどうかで税区分を切り替えられるかを確認します。

免税事業者などからの仕入れの経過措置にも注意が必要です。令和5年10月から3年間は80%控除でしたが、令和8年度税制改正により、令和8年10月から2年間は70%、令和10年10月から2年間は50%、令和12年10月から1年間は30%と段階的に下がります。

取引日に応じて控除割合の税区分を切り替えられるか、マスタ更新を誰が行うかを比べましょう。

電子帳簿保存法への対応と監査証跡

電子帳簿保存法は、電子取引とスキャナ保存のどちらに対応しているか、検索や履歴の要件をどう満たすかを確認します。

確認項目確認する内容
電子取引の保存メールやWebで受け取った領収書をデータのまま保存できるか
スキャナ保存撮影画像の解像度や入力期間を管理できるか
検索要件取引年月日・金額・取引先で、範囲指定や組み合わせ検索ができるか
タイムスタンプ・訂正削除の履歴タイムスタンプを付与するか、訂正削除の履歴が残る仕組みか
監査証跡申請・承認・差戻し・修正の操作ログを出力できるか

出張旅費や交通系ICカードの履歴の保存方法は出張旅費の電子帳簿保存法対応で解説しています。

「電帳法対応」の表示だけで判断しない

電子取引だけに対応する製品と、スキャナ保存まで対応する製品があります。事務処理規程や紙の原本の廃棄ルールとセットで運用できるかを確認してください。

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監査証跡は内部統制の評価や税務調査で見られます。差戻しや修正の履歴を、あとから一覧で出せるか確かめましょう。

料金体系と費用対効果の考え方|設例で比較

料金と費用対効果を電卓で計算している様子

料金は、月額の利用料に初期費用やオプションが加わる形が一般的で、体系によって年間の総額が変わります。

料金体系内容比べるときの注意
月額×ユーザー数利用者1人あたりの月額承認だけの人や退職者も課金対象になるか
従量(申請件数)申請1件ごとに課金繁忙期や出張の多い月の件数増
初期費用設定代行・マスタ登録・データ移行自社で設定する場合に省けるか
オプションカード連携・電帳法対応・API連携・サポート必要な機能が基本料金に含まれるか

比較はオプションを含めた年間の総額で行います。料金は製品や契約で変わるため、見積りは同じ条件(人数・件数・オプション)で取り寄せましょう。

設例:A社の費用対効果

A社は利用者100人、経費精算の申請が月300件の会社です。導入前後の1件あたりの作業時間と時給を例として置き、削減時間を金額に換算します。

担当1件の時間(導入前→後)月の削減時間金額換算(例)
申請者15分→7分40時間100,000円(時給2,500円)
承認者3分→1分10時間35,000円(時給3,500円)
経理8分→3分25時間62,500円(時給2,500円)
合計―75時間197,500円

費用は例として、月額600円×100人=60,000円にオプション10,000円を加えた月70,000円、初期費用300,000円とします。月の効果197,500円から月額費用を引くと127,500円で、初期費用は300,000円÷127,500円=約2.4か月で回収できる計算です。

初年度で見ると、効果2,370,000円に対して費用1,140,000円(70,000円×12か月+300,000円)で、差額は1,230,000円になります。

設例の作業時間・時給・料金はすべて説明用の例です。削減時間はそのまま人件費の減少にはならないため、稟議では削減した時間の使い道もあわせて示しましょう。

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申請者は人数が多いぶん、削減時間の合計が経理より大きくなりがちです。経理の時間だけで比べると効果を小さく見積もります。

選定の進め方とチェックリスト|無料トライアルで確かめること

選定の評価表を使って候補を比べている様子

次の5つのステップで進めると、判断の根拠を稟議書にそのまま残せます。

STEP
要件を整理する

整理シートをもとに、必須の条件とあるとよい条件に分けます。会計連携と承認ルートは必須に入れます。

STEP
候補を3〜4つに絞る

タイプを決め、必須条件を満たす候補を資料と問い合わせで絞ります。

STEP
デモ・無料トライアルを行う

自社の申請データと承認ルートで試し、経理・申請者・承認者がそれぞれ操作します。

STEP
評価表で採点する

項目ごとに重みと点数を付け、合計で比べます。採点は複数人で行います。

STEP
稟議・契約を進める

評価表と費用対効果の試算を添えて稟議を上げ、契約条件を確認します。

経費精算システムの評価表の作り方

評価表は、項目ごとの重み(合計100)と5段階の点数で採点し、得点=重み×点数÷5の100点満点で比べます。

評価項目重みA案(点数→得点)B案(点数→得点)
会計連携305点→303点→18
経理チェック機能203点→124点→16
申請・承認の使いやすさ204点→165点→20
電帳法・インボイス対応154点→124点→12
費用153点→94点→12
合計1007978

この例では合計点がほぼ同じですが、重みの大きい会計連携でA案が上回っています。差が小さいときは、重みの大きい項目と毎月の手直しが残るかで決めると失敗が少なくなります。

無料トライアルで確かめること

トライアルでは、実際のデータで仕訳の出口まで通して確かめます。

  • 過去1か月分の申請データから数十件を入力し、仕訳を出してみる
  • 出力した仕訳を会計システムに取り込み、科目・部門・税区分がそのまま使えるか
  • 自社の承認ルート(金額による分岐・代理承認)を再現できるか
  • 営業や現場の人に、スマホでの申請と承認を試してもらう

契約前に確認すること

契約前には機能以外の条件も確認します。特にデータの扱いは、将来の乗り換えに影響します。

契約前に確認する3つのこと

  • データの出力:申請・仕訳・領収書画像を一括で出力でき、解約後もしばらく保存されるか
  • サポート体制:導入時の設定支援や、問い合わせの窓口・対応時間
  • セキュリティ:アクセス権限の設定、ログイン方法、第三者認証の取得状況
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領収書画像は法定の保存期間が長いので、解約後のデータの持ち出し方を契約前に確認しておくと安心です。

まとめ

  • 比較の前に、人数・件数・会計システム・承認ルート・支払手段・規程を整理する
  • 会計ソフト付属型・単体型・ERP一体型のどれにするかは、今の会計システムから逆算する
  • 機能は申請・承認・経理チェック・支払に分け、経理が手で直す作業が残るかで比べる
  • 会計連携は仕訳の形式・マッピング・単位、法令対応は電帳法と経過措置まで確認する
  • 料金はオプション込みの年間総額で比べ、全員の削減時間で費用対効果を出す
  • 評価表とトライアルで仕訳の出口まで確かめてから、稟議・契約に進む

まずは整理シートの項目を埋め、自社の申請件数と支払手段の割合を集計するところから始めてみてください。

ティー

選んだ仕組みは何年も使います。比較の観点を経理が持っておくと、導入後の手直しをぐっと減らせます。

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