コロナ禍を契機にリモートワークが急増し、これまで紙で管理していた書類の電子化が一気に進みました。
それに呼応する形で、これまで厳格だった「電子帳簿保存法」も改正により要件が大幅に緩和され、大企業のみならず中小企業や個人事業者でも手軽に利用できるようになっています。
- 名前は聞くけれど、電子帳簿保存法ってそもそも何?
- 対象となる書類はどこまで電子化してよいの?
- 要件が多すぎて、何を準備すればいいか不安…
そんな疑問をお持ちの方に向け、本記事では「電子帳簿保存法で押さえておくべき用語」をわかりやすく解説します。
この記事を読めば、制度の概要から実務対応で必要なポイントまでスッキリ理解できますので、ぜひ最後までご覧ください。
電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、正式には「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等に関する法律」といいます。

ポイントは、法律で保管が義務づけられた帳簿・書類を、紙ではなく電子データで保存してもよいという制度を定めた点です。
従来はすべて紙の原本を保管しなければならず、保管スペースや管理コストが膨大でした。
ところが、2022年の改正で「スキャナ保存」や「電子取引データの保存」が緩和され、中小企業でも導入しやすくなりました。
改正の背景
リモートワークの普及
- 紙を社内に持ち込めない状況が続出
IT投資の促進
- 政府のデジタル庁設立など、国の後押し
保管コストの削減ニーズ
- 倉庫家賃・人件費の高騰



2022年1月から段階的に要件が緩和され、2024年1月には電子取引データの保存が完全義務化されました。
電子帳簿保存法対象となる国税関係帳簿と国税関係書類


電子帳簿保存法がカバーするのは、大きく分けて 「国税関係帳簿」 と 「国税関係書類」 の2つです。
カテゴリー | 定義 | 具体例 |
---|---|---|
国税関係帳簿 | 国税に関する法律で備え付け・保存が義務づけられた「帳簿」 | 仕訳帳、総勘定元帳、補助簿(売掛帳、買掛帳、現金出納帳など) |
国税関係書類 | 帳簿の記載根拠となる「書類」 | 請求書、領収書、契約書、見積書、納品書など |



どちらも電子化する際は、それぞれ定められた保存要件を満たす必要があります。
電磁的記録と電磁的方式とは


電子帳簿保存法では、電子化した帳簿や書類を単にファイルとして置くだけではいけません。
「電磁的記録」 と 「電磁的方式」 の両面で要件を満たす必要があります。
電磁的記録
- 定義:コンピュータで生成・保存されるデータそのもの
- 具体例:会計ソフトの仕訳データ、PDF化した領収書、CSV形式の売上データ
電磁的方式
- 定義:電磁的記録を「作成」「保存」「表示」「検索」できる仕組み全般
- 具体例:会計システム、電子文書管理システム



電子帳簿保存法第4条では、「すべての国税関係帳簿・書類を電磁的記録で保存する場合は、この電磁的方式により管理しなければならない」と明記されています。
スキャナ保存


紙で届いた書類を電子化するには「スキャナ保存」の方式を利用します。
こちらにもいくつか要件があります。
スキャナ保存の3要件
解像度200dpi以上
- 文字や数字がはっきり読める解像度が必須
検索性を担保するレイアウト
- 日付・金額・取引先名が一画面で確認可能な形式
訂正・削除防止の運用ルール
- スキャン後のファイルは改ざんできない運用
タイムスタンプとは


電子化したデータが「本当にスキャンされた当初のまま」かを証明するために使うのが タイムスタンプ です。
タイムスタンプの役割
改ざん防止
- 後からデータが書き換えられていないことを保証
証明力
- 公的機関や第三者機関が認定した「時刻証明」を付与
主な運用方法
JIPDEC認定タイムスタンプ
- 一般社団法人日本データ通信協会(JIPDEC)が認定
- 年間契約でスタンプ発行サービスを利用
スタンプ付与のタイミング
- スキャン直後
- 定期的(例:毎月末締め)
電子取引データの保存要件


2024年1月から完全義務化されたのが、電子取引データの保存です。
メールで受け取ったPDF請求書やWeb受注システムのCSVデータなど、すべて電子データのまま保管しなければなりません。
要件
- 訂正・削除防止
- 検索機能
- 可視性の確保
具体例
- メール添付PDFはGmailではなく、会計システムへ自動連携
- 取引先コード/日付で即座に検索できる運用
まとめ
今回は、「電子帳簿保存法で押さえておくべき用語」について解説しました。
電子帳簿保存法の導入を成功させるには、最低でも以下のキーワードを押さえてください。
- 電子帳簿保存法
- 国税関係帳簿・国税関係書類
- 電磁的記録・電磁的方式
- スキャナ保存
- タイムスタンプ



これらを理解したら、次は実際のシステム要件や運用マニュアルの整備へ進みましょう。
紙から電子への切り替えで、書類保管コストの大幅削減と業務効率化を実現し、これからのビジネス環境にしっかり備えていきましょう!